スンリのイタズラなKiss 57
顔色を変えて部屋に上がって言ったスンジョをハニは不思議そうにそちらを見上げていた。
スンジョが顔色を変えるどころか、階段を駆け上がって行く姿を見た事はなかった。
「どうしたんだろう・・・・」
そうつぶやくと、ハニはまた伝説の二人が見えていた方角を見たが、そこにはもう二人の姿を見る事はなかった。
ドラマではドラマらしく二人の最期の時までを素敵な映像での演出になっていたが、目の前に見えたのはリアル過ぎる二人の姿だった。
崖から身を投げて二人は何を思って死を選んだのだろう。
それが分かれば、自分とスンジョの前に何かを訴えたかったのかもしれないが、とてもハニにはそれを分かる事は出来なかった。
トスンとハニの横にスンジョが座るまで、いつ二階から降りて来ていたのか気が付かなかった。
「どうしたの?」
「文献の最後の部分が読めるようになっていた。」
「読めるって、ハングルに変わっていたの?」
「違う・・・・」
パラっと文献の最後のページを開けると、漢字で書かれている文字がにじんで浮かび上がっていた。
「このページから後ろが、透かしても光を当てても読めなかった。」
「炙り出しをしたの?」
「違う、墨で塗られていた。この前の部分は、お嬢様が言った事と同じだ。その後・・・産まれた子供の一人は、ハニお嬢様の実家のペク家、もう一人がオ家の家に預けられた。オ家はペク家の当主に忠実な臣下で、この子たちがキム家の血を受け継いでいない事を秘密にしていた。ハニお嬢様がスンジョと一緒に崖から身を投じたのは、すべてを封印するために手を取り合って二人で決めた事だ。キム家はガンイ亡き後は長男が後継者として付いた。誰も、ペク家とオ家に預けた子供については口にする事もなかった。この心無い提案をしたキム・ガンイはハニが身を投げた後に自分の犯した罪を悔やんで自ら命を絶った。」
「双子だったの?そのスンジョとハニの子供は。」
「男の子と女の子の双子だ。ペク家に預けた子供は、女の子にハニと名前を付けて亡くした娘を思って大切に育てた。オ家に預けた子供はその子の父親の名前のスンジョとした。と書かれている。」
スンジョが書かれている文字を指でなぞってハニに内容を伝えるが、まだその先は墨で塗られて読む事が出来なかった。
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