スンリのイタズラなKiss 59
「ねえ、どこに行く?」
「最初に・・・・・何か食べたい。」
「何かって・・・・・えっ!・・・・やだ、スンリったら・・・明日試験だから今日は・・・・・」
「バ~カ、腹が減ってるんだよ。寝坊したから食べ損なって。」
ソラの頭をポンと叩いて、自分の勘違いと分かったソラは声が大きかった事で、通り過ぎる人が振り向いて自分を見ている事に気が付き恥ずかしくなっていた。
「おば様に作ってもらえなかったの?」
「お袋の食事は・・・・・まぁ・・・理由があって、食事はおばあちゃんが作るんだけど、撮影に行ったみたいで朝起きたらいなかったんだ。」
スンリとソラは、大学近くのカフェに向かった。
大学前のカフェは、値段も手ごろで量も少し多めで、空腹のスンリには一番ありがたい店だ。
「何をキョロキョロしてるんだよ。ソラも何か頼んだらいい。」
「美味しいの?」
「美味いさ。来た事がないのか?」
「ないわ。だって私が行く所は・・・・・・ユン家御用達の所で、大体ホテルのラウンジとか・・・・・・」
ボロボロになったメニューをソラに渡したスンリは、ソラのセレブな生活に釘を刺した。
「学生時代にしか来る事がない店に来ないでそんな所にばかり言っていたら、弁護士としての仕事をしても依頼人の気持ちは判らないだろう。ソラもオレも育った環境は恵まれすぎているけど、今出来る事は体験した方がいい。」
「スンリ・・・・・スンリの家はホテルで食事したりはしないの?」
オーダーを取りに来たスタッフに、自分の食事とソラのために飲み物と軽食を頼んだ。
「うちは兄弟が多いから、ホテルでは食べないし、一番下の双子は小さいからそういった所に行っても門前払いされるさ。ハンダイの名前を使って親父の名前で行ったらいいかもしれないが、親父もお袋もそれは好きじゃないんでね。大体行くのは親父とお袋の思い出のレストランかな。ファミレスだったり、パラン高校前のレストランだったり・・・・・」
「私・・・・・スンリの言うとおりにするね。今からでも遅くないよね。」
「ああ・・・・オレはシャレた店は知らないが、気安く行ける店なら知ってるから。」
「スンリの行く所なら、死ぬまでどこまでも付いて行くわ。なんだか、私からプロポーズをしたみたい。」
結婚などまだ意識していなかったスンリは、ソラの言葉に飲んでいたコーヒーを吹き出した。
その日一日は、明日のソラの試験の緊張をほぐすために、ソラの行きたい所に行く事にした。
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