スンリのイタズラなKiss 60
「ねぇねぇ・・・スンリあそこに行こうよ。」
ソラの指を指した方は、スンリの一番苦手としている場所。
「ちょっ・・・・ちょい・・・・・・待てよ。」
「私の行きたい所に連れて行ってくれるんでしょ?」
そうは言っても、スンリにはまだその気にもなれない。
「オレは遠慮するよ。」
「どうしてよ、一人で行っても仕方がないでしょ?スンリと二人で・・・・・ねぇ・・待ってよ。」
スンリの腕を掴んでいるソラの手を振りほどき、クルッと向きを変えてサッサと先を歩きだした。
「お願い・・・・・・行って見たかったのよ。女の子なら好きな男の子と・・・・ねぇ・・・・・・」
一度嫌だと言ったら、スンリは行く事はない場所。
責任が取れるのなら、ソラの希望通り行ってもいいが、スンリはソラよりもあと2年は学校に通わないといけない。
後ろから声を掛けて付いて来ているはずのソラの声が急に静かになった。
気になって振り返ろうとした時、頭にかなり重みのある物が投げ付けられた。
「ってぇな・・・・・・」
ソラが投げ付けたのは、ソラのカバン。
「別にスンリに責任を取ってと言わないから、見て見たいもの・・・・・・」
ソラは遠くになった建物の方を振り向いて、名残惜しそうに見ていた。
考えたら、スンハはソラ位の頃にインハがお腹にいて、結婚する事になった。
女の子なら夢を見たいかもしれない。
「判ったよ・・・・その代り、明日の試験は絶対に受かるんだぞ。」
ソラは嬉しそうに目を輝かせて、スンリの手を掴んでまたその建物の方に急ぎ足で歩いた。
「いらっしゃいませ。」
スンリとソラの二人が店内に入ると、スタッフがにこやかに声を掛けて近づいて来た。
「ご結婚はいつごろですか?」
「まだ・・・・私たちは学生で・・・・・」
「そうでいらっしゃいますか?あまり幸せそうでしたので、ご結婚が控えていらっしゃるのかと・・・・・・」
こういった場所はスンリは嫌いだった。
買うとも言わないのに、聞きもしないのに色々と説明をしてくる。
「ちょっと試着してみませんか?新作が入ったばかりで。」
ソラはいろいろ並んでいるウエディングドレスを見て、気に入った物があるのかそれを手にしてスタッフに聞いて来た。
「これ・・・・着てもいいですか?」
どこか見覚えのあるドレス。
どこで見たのだろうか、いつ見たのだろうか、ソラは嬉しそうにしてスタッフと一緒に試着室に入って行った。
「素敵なドレスでしょ?とても人気があって、今予約をしても2年先までこのデザイナーのドレスは予約が取れないのよ。」
どっちでもいいと思って、辺りをキョロキョロとしていると、ウエディングドレスに着替えたソラが結婚の約束もしていないのに結婚間近な人のような顔で出て来た。
そうだ、このドレスはスンハが結婚式に着たデザイナーがデザインしたドレスだ。
全体にパールをちりばめ派手ではないが、品のあるこのデザイナーの作品は毎年富裕層の人たちが競ってオンリーワンを作っていた。
小麦色のソラの肌にパールと少しクリームかかったドレスがとても華やいでいた。
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