スンリのイタズラなKiss 69
「婚約していたって?」
「うん・・・・大学3年の時に婚約したって、ママが言っていたの。」
大学3年って・・・・親父がお袋と結婚した時だぞ。
「まさか・・・・・お袋は婚約者のいる人を横取り出来るような女じゃないぞ。結婚をしているのに未だに片想いしているみたいだって言っている事は言っているが、おまけにお親父はお袋以外の女性(ひと)には全く無関心だ。たまに病棟の方に実習で行くと、看護師や女医にしな垂れかかれても、サッと逃げているのを見ているし、白衣のポケットに差し入れられるメモも、近くのごみ箱に捨てている。」
どうしてメモを見ないのかを聞いた事があった。
「ハニから貰ったメモじゃないから。」
そう言っていた。
「他にソラは何を聞いたんだ?」
「それだけ・・・・・それだけしかママも言わなかったの。」
だから最初にソラを家に連れて来た時に、お袋は泣いていたんだ。
あの後、両親の部屋の前を通った時に聞こえた事は、この事をお袋が結婚してもう二十年以上経つのに引きずっていたと言う事か?
それでも、この旅行は何も言わないで送り出してくれた。
「そう言えば・・・・・昔、おじさんの会社がおじいちゃんが社長だった頃に大変な事があったと聞いた事があったな。」
「大変な事?」
「ああ、親父とおじさんとオレと3人で飲みに行った時の事だけど・・・・・・・・」
「ウンジョ、創立50周年おめでとう。」
「おじさんおめでとうございます。」
「ありがとう・・・と言うか、おじいさんが創立してからだと70周年だよ。」
創立記念の式典が終わって、お袋とミアおばさんが弟たちを連れて帰った後に呑み直す事になった。親父はどれだけ飲んでも変わらないが、おじさんはいい気分になっていたからもう少し男だけで飲んだんだ。勿論、オレは酒が飲めないから、都合のいい運転手代わり。
「あの時はどうなるかと思ったな、兄貴。」
「あぁ・・・・・・・・」
顔色一つ変えていなかった親父が、その時だけ眉間にしわを一瞬寄せた。
「何かあったのですか?おじさん。」
「あったんだよ・・・・・スンリのおじいさんが倒れて兄貴が社長代理になって会社の仕事をしたんだよ・・・・あれは大学何年だったっけ・・・・・・・」
「3年に上がったころだ。」
「そうそう・・・・・大学3年に上がって、理工学部から医学部に移った時だよな。」
親父が理工学部だった?
「行って初めて知ったんだよな、新作ゲームに必要な資金が足りなくて・・・・・・」
「ウンジョ・・・もうそれ以上は言わなくていい。」
「聞きたいな。おじさんがハンダイを大きくした話しを。」
親父がいつになく不機嫌な顔になった事に気が付いていたけど、それは親父が大変な思いをして立て直したのだと思っていた。
「オリエントコーポレーションのユン会長の・・・・」
「ウンジョ!」
賑やかな店内が一瞬で静かになるほどの親父の怒った声。
「飲み過ぎだ、帰るぞ。」
親父が伝票を持って会計に行った時にオレは、飲み過ぎてふらついたおじさんに肩を貸した。
「おじさん・・・・・・何があったんですか?」
「いや・・・あの時は、おじさんもおばあちゃんもそれにハニ義姉・・・・お前のお母さんも辛かった時期だから・・・・・・思い出したくない出来事だ。」
それ以上おじさんも言わなかったし、オレも聞いてはいけない事だと思っていた。
0コメント