スンリのイタズラなKiss 71
父が以前に掛けた電話番号を覚えていたスンリは『久しぶりに済州島に来たから挨拶をしたい』と言ってその人に連絡を取った。
「歩いて行くの?」
「当たり前だ。」
「そんなぁ~海風が当たって寒いのに・・・・・・・」
「しばらく歩けば、血流もよくなって汗をかくさ。お前の父親はテニスオタクなのに、いつも車ばかりだからたまにはトレーニングしろよな。」
ハイヒールにミニスカートが定番のソラを見て、スンリは呆れたように舌打ちをした。
「ほら、オレのスウェットに着替えろ。靴は・・・・・昨日のブーツでも履いていればいい。」
「やだぁ・・・・センス悪すぎ。」
「スウェットにセンスも何もないだろう。ハイヒールなんて履いて来る方が悪い。」
ブツブツ言いながらも、スンリのスウエットに着替えたソラはそれなりに嬉しそうな顔をして、スンリの腕にぶら下がるようにくっ付いて来た。
「遠いの?」
「もう少しだ。」
遠くに小さな家が見えて来た。
スンリは昔訪れた時の記憶を頼りに、祖父のスチャンが社長をしていた時の秘書の家に向かっていた。
老人が住むにはちょうどいい大きさの家は、その頃と変わらないままだった。
門の外に人が立っているのを確認が出来ると、その人もスンリに気が付いたのか小走りに近づいて来た。
「スンリ坊ちゃま・・お久しぶりです・・・・・ご立派になられて。」
「あなたもお元気そうで・・・・・こちらは僕の婚約者のワン・ソラです。」
スンリに婚約者として紹介されたソラは、嬉しそうにピョンと跳ねるようにして前に出て来た。
「ワン・ソラです。初めまして。」
「初め・・・・」
ソラを見てその老人は目を大きく見開いた。
「ユン会長の・・・・・・」
「私の大おじい様をご存じ?」
訳のわからない様子の老人は、スンリとソラの顔を交互に見て目を瞬いた。
「と・・とにかく・・・中へどうぞ・・・・おばあさん、スンリ坊ちゃまがいらしたからお茶の用意を。」
室内は老人二人が住むにはちょうどいい広さだった。
「へぇーこんなに小さかったんだ。」
「坊ちゃまが大きくなられたからですよ。前にいらした時は、スング坊ちゃまとスアお嬢ちゃまが2歳になられた頃でしたか・・・・あの時はスンリ坊ちゃまは勉強に忙しくて挨拶だけしてすぐにお帰りになられて・・・・・」
老人の妻はソラの顔を見てまた驚いた。
「まぁ・・・・あなたは・・・・・」
「ワン・ソラです。初めまして・・・・・・・・」
「オリエントコーポレーションのお嬢様とよく似ていらっしゃいますね。」
「母をご存知ですか?」
「母?」
老人とその妻は、ソラの言葉に心臓が止まりそうなほど驚いた。
「似ていますかオレ達・・・・・・オレは父で、ソラは母親に・・・・・・・」
「そっくりでございます。」
「今日来たのは、父とソラの母親の昔の事を聞きたくて。」
その言葉を聞くと、夫の合図で老人の妻は退席した。
「なんでございましょうか。」
「父とソラの母親の過去に付いて聞きたいのです。オレとソラは2年後に結婚するのですが、どうしても知らない事がオレ達にあるような気がして・・・・・父たちには何も言いませんので、どんなことでも構いません。教えてほしいのです。」
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