スンリのイタズラなKiss 72
「どう話していいのかな?」
「ソンさん・・・オレ達は本当の事が知りたいので、隠さずお願いします。母が婚約者のいる父をソラの母親から奪ったのですか?」
「それは、違います。奥様はそんな事をなさる方でも出来る方でもありませんから。」
祖父の元秘書のソンは、目を閉じて昔を思い出すように深呼吸をした。
「当時の室長が、スンジョ様にお見合い話を持って行ったのです。」
当時のオリエントコーポレーションのユン会長と、融資の話をしてお見送りをする時に、突然会長が言い出したのです。ユン会長は元々、坊ちゃまのおじい様には何度も孫娘の・・・・・・ソラ様のお母様と見合いをさせたいとよく申しておりました。ただ、おじい様は子供には親の仕事と関係のない自由な結婚をさせたいとおっしゃられ、ユン会長の話をやんわりと断られていました。ご存知かと思いますが、スンジョ様が大学3年に上がった頃から、健康診断で心臓に不安がある事は判っていたのですが、特に心配の状況でもなく経過観察でした。ハンダイの主流は、子供のおもちゃの時代からすべての年齢層が使うゲームの時代に変わっていましたが、ゲームというのは各玩具メーカーも競うように次から次へと発表をして、目新しい作品に人々は心を惹かれるもので、シーズン制のゲームをヒットさせたと言っても、何時までもいい状況でいることは難しいようでした。」
ソンは話す事をまとめるように、少し考えながらお茶を飲んだ。
「新作ゲーム発表の時には次のゲームを作りかけないと行けなくて、資金もかなり必要になります。オリエントコーポレーションとは長い付き合いですが、実績だけで融資をするわけにはいきません。それが経営というもので・・・・ハンダイも他メーカーに負けないようなゲームを作るためにかなり資金に負担がかかるようになりました。
その時におじい様が倒れられて、スンジョ様が医学部を休学して社長代理になられたのです。あの頃のスンジョ様は今のように、ご自分の気持ちを人に伝える事もされないで、全てを隠してご自身の心を閉ざしていらっしゃいました。
私はおばあ様とスンジョ様がお見合いをされた時に、病院の談話室で少しお話をした事があります。
「おばあちゃんと話をしたのですか?」
「はい・・・・スンジョ様がハニ様への思いを心に秘めていらっしゃるのに、お見合いをしたと・・・・」
「ソンさん、息子は同居している主人の友人の娘のハニちゃんの事が好きなんですよ。」
「室長の話では、お好きな人はいらっしゃらないと・・・・・・」
「あの子・・・・・会社の為に・・・・・・お見合いをしたのだと思うの。お金で心を売る事をすごく嫌っている子供なのに・・・・・自分の思いを殺してしまったの。」
「奥様・・・・・おばあ様はおじい様の体調が安定されたら、夜だけは自宅で過ごされる事にされたようです。スンジョ様は、時々思いつめた表情をされているという事でしたが、ユン・ヘラ様との結婚の準備も予想以上に早く進められていたようで、いつでも婚約発表が出来る状況まで行きました。スンジョ様の考えられた新作ゲームの発表と同時に婚約発表をすると言う事まではよく存じていますが・・・・・・・ハニ様と突然結婚をするから、ハンダイの名前で式場を押さえてほしいとおばあ様から頼まれた時は、私もどうしてそうなったのかは・・・・・・」
「ありがとうございます。それだけ分かれば、あとは自分たちで解決します。」
スンリとソラはソンに挨拶をして、無言でホテルに帰って行った。
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