スンリのイタズラなKiss 73
ソン元秘書の家を出てからホテルに帰る道、スンリは一言も話そうとはしなかった。
「ねえ・・・ちょっと休んで行かない?行く時に素敵な場所を見つけたの。」
「ぁあ・・・・・」
ソラに手を引かれるまま、見晴らしのいい場所まで連れて行かれた。
「嫌な事だよな・・・・・・」
「嫌?私と結婚をするのが嫌な事になったの?」
「そうじゃなくて・・・・ソラのお母さんは、そんな昔の事を忘れているだろうけど、お袋は意外と見かけによらず傷つきやすいし、親父の性格からするとお袋が悲しい顔をするのが一番辛いし、負い目があるはずだ。」
「負い目がある?」
「おばあちゃんがソンさんに話した事が本当だとすると・・・多分本当だと思うけど、お袋の気持ちを知っていて、おまけに自分もお袋の事を好きなのを隠して見合いをしたから、それが負い目で自分の人生で初めての間違いに気づいているはずだ。親父には失敗も間違いもそれが自分であろうと他人であろうと許せない事だと思う。」
「難しい人ね、スンリのお父さんは。」
「難しくなんかないさ、親父は結構判り易い人間だ。お袋以外を信用していないと言う事は家族の全員が知っている。まっ、ソラもうちの家族と同居すれば判るさ。」
「ど・・・・同居?」
結婚を約束しているものの、まだそれがいつになるのかは二人は特に話してはいなかった。
それが、二人だけの旅行に来てスンリから出た言葉にソラは動揺した。
「何を顔を赤くして動揺しているんだよ。」
「同居って・・・・・・・」
「二人で旅行をしたいって言うくらい、お前は平気な顔をしていたのに、結婚して同居が恥ずかしいのか?」
ソラもただスンリと一緒にいたいと思っただけで、二人の旅行に何も考えずに来たが、考えてみれば部屋のベッドは一つだけ。
一緒のベッドで眠りこんだ事はあったが、あの時は今のように特別に将来の話をしていたわけでもなかった。
「は・・恥かしいとか・・・・・はい、恥ずかしいです。」
「はは~ん、もしかして、勝負下着とか持って来たとか?」
「どうして・・・判ったの?」
「お前は頭が良いが、たまにバカなのかと思う時がある。」
「バカなら司法試験に一度で受からないわよ。」
「似てるよ」
「似てる?」
「お袋に・・・・・お袋は頭はいい方じゃないけど、ある分野では天才だからな。」
「ある分野?」
「何でもない・・・・・・それよりも、親父の過去の事がここまで解ったのなら、口が堅い親父に聞くよりソラのお母さんに聞いた方がいいな。」
そうだ、一緒に旅行に来たのだから、将来の事もきちんとソラの両親に話さないといけない。
まずは、親父に過去の事を知った事を言わないと。
お袋が気にしている事を知っている事も言っておかないと、ソラと結婚した後にソラに悲しい思いはさせてはいけないからな。
「ねえ・・どうして黙ってるのよ・・・あ~」
「何だよ!」
「今夜の事で、すっごくエッチな事を考えていたんでしょ?」
「まさか!」
「どうだか。」
「お前と違うわ。勝負下着を持って来ているようなスケベな女はソラだけだ。」
大きな声でじゃれ合っている二人を、通り過ぎる人たちは喧嘩をしているのと間違えて、心配そうに見ていた。
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