スンリのイタズラなKiss 75
“どうした?”
(パパ)
“えっ?”
(ちょっと待ってて)
スンリとソラは、ソラの父ギョンスからの電話に驚き、通話口を押さえて声を出さずに身振り手振りで話した。
声を出さなくても、電話の向こうから聞こえるギョンスの声は音割れをして直ぐ横で聞こえるくらいに大きな声で聞こえた。
<ソラ!パパの問いに応えてくれ!>
「パパ・・・・・落ち着いて、ラケットを持ってるの?」
<持ってるよ。誰と一緒に行ったんだ!!>
「誰って・・・・こんな朝早くからどうして電話を掛けたのよ。電話は掛けない約束でしょ?」
受話口を耳に付けていると、頭が痛くなりそうなギョンスの声。
どうしてソラとの約束を守らず、朝早くから電話を掛けたのか・・・・
久しぶりにパラン大のテニスサークル『トップスピン』の後輩を指導に行こうと愛妻とコートに行った時に、友人の少ない中のソラと割と親しく、旅行も一緒に行くことに口裏を合わせていた友達が、自分たちも旅行に行く予定だったのがキャンセルになったため、突然大学のテニスサークルに訪れたソラの両親に、嘘がばれたのだった。
<すぐに帰って来い!>
「無理よ。飛行機のチケットは明日の夜だもの。」
<それなら、会社のセスナをそっちに行ってもらうから。>
「お願い、もう一日泊まらせて。調べる事があって来てるんだから。」
<もしもし、ソラ?誰といるの?>
「そ・・・・・・・それは・・・・・・・」
<まさか・・・・まさか・・・・・ペペペペペク・スンリか?>
「明日、帰るから。じゃあね。」
ソラは父が話をしているのを無視して、一方的に電話を切った。
スンリの方に振り向いたソラは、以外にもケロッとしていた。
「バレちゃったみたい。頼んでおいた友達が、旅行に行けなくなって朝練に出たんだって。そこに、私がいなくて暇だった両親が、後輩を指導に行って・・・・・・スンリ、パパに殴られるかも。」
「まぁ、それは仕方がないよ。朝食を摂ったら、早い飛行機の便があるはずだから帰ろう。」
「ダメよ。今帰ったら、パパが興奮状態だから何をするか判んないよ。ママがきっと、パパの怒りを抑えてくれるから。もう一泊したい。」
「帰った方がいいよ。」
「もう一泊したいよ。折角二日分の勝負下着を買ったんだから・・・・・・・」
「お前なぁ・・・・・・判ったよ。朝食だ、まず食べよう。」
朝食が用意されたレストランは、日当たりも良く穏やかな空気が流れていた。
「どうぞ、テラスの席を用意しております。」
スタッフに案内された席は少し肌寒い風が当たるが、晴天で風もなく朝日が温かかった。
「いい場所ね。」
「だろ?お袋がこの席がいいからって、教えてくれたんだ。」
「お母様が?」
「新婚旅行で最後の朝食に使った場所なんだ。」
「ふーん。」
スンリがスタッフに合図を送ると、数人のスタッフがワゴンを押して近づいて来た。
「朝食のメニューです。」
ソラはメニューを受け取って開くと、その中の物を見て嬉しそうに微笑み、目が潤んでいた。
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