スンリのイタズラなKiss 最終話
「寿ぎに相応しく小春日和ね。」
「そうだな。ところで、ギョンス先輩はどうしたんだ?」
ヘラの横にはいつも必ずギョンスがいた。
スンジョの横にハニがいるように。
「昨日一日中泣いていたから、すごい顔になって・・・・・・クスッ・・・メイクさんを頼んだの。」
「先輩らしいな。」
「そう言うあなたの愛妻もいないじゃない。」
「ちょっと、手が離せなくてな。」
ヘラは驚いたように、スンジョを見上げた。
「まさか!8人目とか?」
「さすがにこの歳になってからは、それに孫もいるからな。ハニは付き添いだ。」
「付き添い?誰か具合が悪いの?スンハちゃんが妊娠したの?」
ホール入口の方を見たスンジョの視線を辿ると、大学生になったばかりのスンスクと一緒にハニが入って来た。
「あの車椅子の女性は・・・・・・・」
ハニと並んで歩いてくるスンスクが車椅子を押していた。
「スンリの弟のスンスクは知っているよな。その、妻だ。」
ヘラはスンリの弟が結婚した事を知らず驚いた。
「いつ結婚したの?」
「高校を卒業してすぐだ。」
手足の細い色白の女性は緊張した顔で人々の視線を受けていた。
「ヘラ~~」
ヘラがスンジョにもう少し聞こうとしたら、ギョンスが奇麗にメイクされて表れた。
「あら!若くなったじゃない。お式が終わるまでは泣かないでよ。」
メイクをした所為か、とてもギョンスとは思えないくらいに顔が若くなっていた。
スンジョは笑いを必死でこらえながら、式場の係員の案内で披露宴会場に入って行った。
緊張した顔でひな壇にいるスンリを見て、ハニは涙を浮かべていた。
そんなハニの手にスンジョはそっとハンカチを渡し、スンスクの妻の体調を気遣った。
「具合が悪くなったらいつでも言いなさい。控室にベッドが用意されているから。
「お義父さん大丈夫です。」
スンスクは妻の手をしっかりと握った。
スンスク達はまだ結婚式を挙げていない。
挙げないのではなく、妻の体調がいい時に身内だけで挙げる予定だ。
ほどなくして、司会の言葉で披露宴が始まると、ウエディングマーチが流れて来た。
ドアが開いて、父ギョンスに伴われてソラがヴァージンロードをゆっくりと歩いて来た。
参列者の拍手に交じって、失笑している人の声が聞こえてくる。
「ス・・ス・・・スンジョ君・・・・・ぷっ!先輩の顔・・・・顔が・・・・・・・」
「ハニ!笑う・・・・・クク・・・・笑うな・・・・・・」
「スンジョ・・・君だって・・・笑ってる・・・・先輩の顔が・・・・ぅぅぅ・・・」
笑顔のはずの花嫁の顔は、なぜなのか怒っていた。
ひな壇でソラを迎える為に待っているスンリも笑いを堪えるのに必死だ。
ソラの手をギョンスから受け取ると、間近で見たからなのかスンリが堪え切れず、大声で笑いだしてしまった。
「何が・・・・何が可笑しいんだ。ペク・スンジョ・・・じゃなかったスンリ。お前に、オレの可愛い娘を嫁がせるかと思うと・・・ぅぅぅうううう・・・・・」
会場はギョンスのとんでもないほどの大きな泣き声と、爆笑で食器がカタカタと音を立てていた。
「パパのバカ!一度しか挙げない式なのに、バラエティー番組みたいになったじゃない。」
ドレスから新婚旅行のための服に着替えて、参列者に見送られながらハネムーンに向かう車の所で待っているスンリの隣に並んだ。
「仕方がないだろう。男のオレが産まれて初めて化粧をしたんだ。まさか、涙だけで化粧が崩れるとは思わなかったよ。」
「だからあなたに言ったじゃない。お式が終わるまで泣かないでって。メイクさんに頼まないで、腫れぼったい顔で式に来た方が良かったわね。」
「すまない・・・ヘラ・・・・・」
「じゃあ罰として、パパにひとつ言っておくわね。秋になったらおじいちゃんになるからね。」
「「「えっ?」」」
その場にいたギョンスだけじゃなく、スンリもヘラもスンジョもハニも、ソラの言葉に固まってしまった。
「それじゃあ、ハネムーンに行って来ます。」
ソラはスンリの腕を引っ張って、ニコニコとしながら車に乗った。
何事があったのかスンリが理解したのは、車を走らせて数分経った時だ。
「旅行に行くのは止めよう。」
「どうしてよ。もう安定期だから大丈夫よ。」
「何で言わなかったんだよ、妊娠した事を。」
「言いたくなかったもの、パパがまた大騒ぎをするから。」
~~カラカラ~~~
スンリとソラの乗った車は、賑やかな音を響かせて空港に向かった。
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