明日はまだ何もない明日(スンミ) 11
まだ熱があるから、体を起こすとふらつく。
3限目からの授業・・・・・これはスンミと先生だけの暗号
バレエ教室の3階にある倉庫で先生と会う事。
別に先生と会って何かするわけでもなく、ただ二人並んで座っているだけ。
「あら?スンミもう起きてもいいの?」
「オンマ・・・おはよう・・・学校に行く用事が出来たから。」
昨日の事があって、母に嘘を吐くのは気が引けた。
「アッパは?」
両親の寝室の方を不安そうに見ているスンミの顔色は良くない。
ハニは、今にも倒れそうなスンミが心配で仕方がない。
「朝早くに出かけたわ。今日は講義もないし、スンミの授業が終わったら、一緒に出掛けようかって言ってたよ。」
「出掛けるのはまだ体が辛いから・・・・・今度ね・・・提出物もあるし、新しい課題が出ていたら少し大学でやって来るね。」
いつも通りのスンミの朝食は、小学生のスングとスアよりも少ない。
今日はそれさえも喉をうまく通って行かない。
「ヨーグルトだけで・・・後はいらない。」
「もっと食べなきゃ・・・・スンミは食べないからすぐに疲れるんだよ。」
私もオンマみたいに幸せそうにこうして笑いたいな。
「オンマ、幸せ?」
「幸せだよ。大好きなアッパと可愛い子供たちに囲まれて、こうして暮らす事が出来て、すっごく幸せだよ。」
スンリお兄さんから聞いたオンマとアッパの結婚までの二人の事を考えると、オンマのパワーって、人にはとても負けそうにもないと思う。
「私も、オンマみたいに沢山の子供のお母さんになれるかな?」
「・・・・・・」
それにはハニは何も答えなかった。
スンミも判っている。
先生との事に叱られて反対されてはいないけど、オンマもアッパも歓迎はしない。
それに、自分は母親にはなれない事は知っている。
前に一度入院した時に、担当医師の話を聞いた事があった。
「もう行くね。」
「行ってらっしゃい。体調が悪くなったら、アッパの携帯に連絡してね。」
「大丈夫だよ。」
玄関を出て階段を降りていつもなら門から少し離れた所で、先生が車を停めて待っていてくれる。
昨日の今日だからさすがに迎えに来てもらうのは気が引けた。
バスに乗ってバレエ教室まで行くのは、今の体調では辛いけれど、オンマの車で送ってもらうわけにはいかない。
大学に行くと言って嘘を吐いているのだから。
バスに乗ると先生からメールが入った。
____どこかに迎えに行こうか?
大丈夫です。今はバスに乗っているからもうすぐ着きます______
いつかは奥さんに見つかる事も判っていたけど、先生が信じてほしいと言ったから信じだの。
バスを降りて、バレエ教室の建物を見上げると、先生が3階の窓から私が来るのを待っていた。
その先生の顔を見たら急に元気が出て来て、走らないように出来るだけ急ぎ足で歩き裏口から中に入った。
荷物の運搬用のエレベーターじゃないと、3階まで直接上がれない。
乗り心地が悪いけど、そんな事は気にならなかった。
先生に会えるのだからそれだけで今の私は元気になれた。
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