明日はまだ何もない明日(スンミ) 12
早朝のまだ静かな時間の弁護士事務所のドアをスンジョは静かに開けた。
「ギテ先輩。」
「ああ、こっちに来てくれないか?」
相変らず人懐っこそうな笑顔のギテ先輩。
朝の用意をしている秘書に、別室にいるからしばらく誰も来ないようにと伝えて、スンジョと一緒に奥の部屋の中に入った。
「最近の先輩は忙しそうですね。テレビ出演や講演会と弁護士業が。」
「お前ほどではないよ、パラン大医学部の教授は、引っ張りだこで・・・・・・・と、ところで相談ってなんだ?」
「ギョンス先輩に聞いても良かったのですが・・・親戚関係になっているから、ちょっと聞きにくくて。それにギョンス先輩は口が軽いから、どこかで漏れたら困るので。」
特に嫌味でもなく、軽いジョークのようにスンジョはギテに言った。
「子だくさんで幸せな天才ペク・スンジョが、離婚問題専門のような弁護士に何を相談だ?」
「先輩の高校の同級生の事で聞きたいのですが・・・・・・」
「高校の?パラン高校時代のオレの同級生?」
「はい。」
最初から娘が付き合っている妻子持ちの男とは言い出しにくい。
いくら離婚専門だとは言っていても、ギテはこの業界では弁護を依頼するのが難しいと言われている人気の弁護士。
「パラン高校から海外の大学に進学した人物をご存じないですか?」
「海外の大学に進学した?まぁ・・・・パランは海外の大学に行く奴が多いからなぁ・・・・」
「舞踊関係の・・・・・」
「舞踊関係?それなら一人しかいないぞ。でも、ソイツは女じゃないぞ男だぞ。」
「ユン・サン・・・・と言う名前ではないですか?」
ギテは不思議そうにスンジョの顔を見た。
「お前・・・・あの頃女に興味がなかったのは・・・・まさかアイツと?」
「違いますよ。オレはそんな気はないですよ。」
頭を掻きながらギテは大きな声で笑った。
「そうだよな・・・そうじゃなきゃ、学生結婚をして7人もの父親にはならんなぁ・・・ハハハ・・・で、そいつがどうかしたのか?」
「まぁ・・・・どんな人物かと・・・・」
ギテは何かを知っているかのように、ニヤニヤと笑ってスンジョの顔を覗きこんだ。
「オ・ハニは、お前が思っている以上にモテたぞ?」
「ハニと何の関係があるんですか?」
「高校から大学まで、オレとあのポン・ジュング以外にも、お前の奥さんの事を好きだった奴は結構いたぞ。」
含みあるギテの言い方に、スンジョのコメカミがピクンとした。
それをギテは気が付いて、またニヤッと笑った。
「ユン・サン・・・アイツもオ・ハニの事を本気で好きだった・・・」
「先生・・・」
「スンミ、熱は下がったか?」
倉庫の中にいるサンにスンミは抱き付いた。」
「まだ、熱があるね。座ろうか?」
二人並んでソファーベッドに腰掛けると、ギィッと言う音がした。
「先生、またここに泊まったの?」
「ああ、妻と口論になってね・・・娘も帰国していたから、聞かせたくなくてここに来たんだ。」
「先生、私ね姉にそれとなく相談したの・・・・」
「スンハと?」
スンミは昨日の夜、スンハから聞いた話を思い出して、その事を考えて明け方まで起きていた。
「お姉さんが、アッパに義兄さんと付き合う事を認めてもらった方法。」
実際には付き合う事を認めてもらうではなく結婚だったが、一向に進まない自分の恋愛に強行突破をしようと考えていた。
「先生と私・・・付き合っているって言っても、学校の送り迎えしたり・・・キス・・・するだけ。先生は私の事を本当に好きなのかなって・・・」
「好きだよ、スンミに本気だよ。」
「だったら・・・・」
スンミの心臓は、爆発しそうなくらいにドキドキしていた。
引っ込み思案の自分の方から、それも年上の男性を誘うのは予想以上に心臓に負担が掛る。
サンの手を自分の胸に持って来た。
「先生は、私と踊る時に身体に触れているから判ると思うけど、すごく痩せていて女らしくないの・・・だから先生は私とは・・・・嫌なのかなって・・・・」
「な・・・・何を言っているんだ?君は自分の身体を大事にする子だろ?」
絶対に先に進もうとしないサンに、スンミの中にあるスンハが持っている物と同じ物が動き始めた。
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