明日はまだ何もない明日(スンミ) 18
パラン大病院での最後の点滴をして、静養所に行く車が迎えが来るのを待っていた。
「アッパの車で行くの?」
「いや、救急車で行くよ。乗り心地は良くないけれど、早く行けるからな。」
行きたくない。
行きたくないけど、今のままでは先生の所にいては迷惑がかかる。
「じゃ、スンスクと交代してくるね。」
「オンマが一緒に行ってくれるのじゃないの?」
「アッパが付いて行ってくれるの。大学の方も講義がないって言っていたから。」
サンとの事があるから、スンミはスンジョと一緒に行く事に少し抵抗があった。
「不服か?」
「ん~・・・・・そう言うわけじゃないけど。」
「オンマに行ってもらってもいいけど、途中でする点滴もオンマになるぞ。」
いまだに注射が苦手なハニにとって、出来ればスンミがスンジョがいいと言ってくれる方がありがたい。
チラッとスンミの方を見ると、驚いた顔をしていた。
「やっぱりアッパがいい・・・オンマの点滴は、遠慮します。」
「ど・・・どういう・・意味なの?昔ほど下手ではないわよ。」
そんな風に話した筝もここ数日はなかった。
熱が出てからはハニが薬を持ってスンミの部屋に入って来てくれたが、スンジョは年頃の娘の部屋には入る箏はなかった。
「どんな静養所なの?いくらナ先生の紹介でスンジョ君が納得しても、身体が弱いスンミ一人を行かせるのが心配。」
「身体が弱いから行くんじゃないか。別に特別な事はしないよ。スンミは虚弱なだけで、特別な治療をする必要もないから、綺麗な空気と静かな環境で過ごして体力を付ければいいのだから。そこの静養所なら、ハニが一人で車を運転しても行ける場所だから決めた。」
ミラの事がなければスンジョが何を言おうと一緒に付いて行きたかったが、ミラの病気が病気なだけに大学に通っているスンスクを助けないといけない。
手配した救急車が来た連絡が入ると、スンミはスンジョと一緒に乗り込んだ。
「お義母さん、スンミに付いて行ってあげればよかったのに。」
「いいのよ、お義父さんが付いて行ったし、静養所と言っても病院だからスンミの今までの病歴とか細々した事を伝えるのはお父さんの方がいいでしょ?ミラも落ち着いたみたいだから、もうすぐ退院ね。」
「お義母さん、私が退院したらスンミの所に行ってあげてください。」
ミラの優しい申し出は嬉しいけど、私はミラの世話をすると決めたのだから、このままここにいなければいけない。
スンミは静養所に行く短い時間でもユックリ一人で考えた方が、本当にサン先生の事が好きなのか判るはず。
私がスンジョ君と少し距離を置いて、スンジョ君もまた私が離れて本当の気持ちが判ったように。
静養所に移って3日。
先生からは何のメールも電話も来ない。
アッパの仕事の関係と先生の地方公演のスケジュールとかの都合がつかないとオンマから連絡があった。
「メールくらいくれてもいいのに・・・返信もない。」
ここの風は、ソウルとは違って穏やかで時間の経過を感じさせない。
不思議と、バレエの事も考えずレオタードも着ないと、私は本当に先生の事が好きだったのかも判らない。
「またスマホを眺めているのか?お前も暇だなぁ。」
振り向くと日に焼けた肌に白い歯が綺麗な、在り来たりな表現しかできないけどその表現がピッタリな研修医が声を掛けて来た。
「余計なお世話です。」
「彼氏からのメールを待ってるんだろ?」
アッパとは正反対のこの失礼な研修医。
どことなくスンリお兄さんと似ている。
顔とかは全然似ていないけど、意地悪っぽく言っていてもなんだかホッとしてくる。
「点滴の時間だぞ。」
私の担当でもないのに、このお節介な研修医はいつも私が外にいると直ぐに見つける。
「ほら、車椅子に乗れよ。」
「結構です。痩せていても歩けますから。」
ベンチから勢いよく立ち上がると、クラッとした。
「ほら言わんこっちゃない。起立性の貧血だ。点滴に頼らずに食い物(くいもん)をしっかりと食え(くえ)。身長が168cmなのに体重が43キロ何て痩せすぎだ。前だか後だが区別つかんじゃないか。」
「まっ!失礼ね。オンマに似たのよ。」
何だろうこの研修医といると、心が温かく感じる。
「名前・・・・・なんて言うの?キム先生。」
「さぁね。オレの名前は高いからな。お前の体重が45キロになったら教えてやるよ。」
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