明日はまだ何もない明日(スンミ) 19
一冊のゴシップ雑誌が、職員休憩室の机の上に置かれている。
若い研修医がそれを手に取り、記事をザッと読みながらニヤリとした。
___ ハンダイ社長の姪で、パラン大医学部教授の次女とバレエ教室責任者の妻子ある男性との不適切な付き合い
男性の妻Aさんは、その次女との交際が原因で家庭内はもめ事が絶えず、教室の方も生徒数激減。
二人の交際を口止めされていた事務職員Bさんの目撃証言によりますと、親密な交際が始まったのは女性が高校二年の秋頃からで、それ以来帰宅しない夫を妻は自宅でただひたすら待ち続けていた。
なるほどね・・・・
「その次女って、キム先生担当の子でしょ?」
「担当ではないけど、よろしくと頼まれただけだ。」
「品のある良いとこの家のお嬢さんなのにだらしのない娘だったのね。」
若い研修医キム・ヒョンジャは、そのゴシップ雑誌をゴミ箱にポンッと投げ入れた。
「ゴシップ雑誌は売るために大袈裟に書くけどな。信憑性もないこの記事をまともに受けるなよ。つまんない事を言っていないで、自分の持ち場にに戻って欲しいな。それと・・・・・・この事で患者を特別な目で見るなよ。ここは社会復帰するための静養所だから。」
若い研修医キム・ヒョンジャはそう言うと、ポケットからスマホを取り出してメールを打ち始めた。
不安そうな顔のハニは、どんな時も顔色を変えないスンジョの方を見た。
そのスンジョがこの数日、スンミの報われない恋の事を知ってから、相当ショックを受けているのか幾分やつれたようにも見える。
ゴシップ記事が載ってから、取材記者がどこに行くにも付いて来る。
スンジョがいなければ、ハニはどうしていいのかも判らない。
あの記事が出た時は勤務時間中。
患者の持っていた雑誌が目に入り、大学の研究室にいたスンジョに電話を掛けた。
「スンジョ君、大変な事になっているの。週刊誌○○○の最新号にスンミの事が載っているの。」
スンジョは、ハニから電話で学校の売店に走った。
既にその記事を目にした学生が、スンジョがそれを買うのを遠巻きに見てヒソヒソと何か話をしていた。
「先生、三流雑誌ですから」
顔見知りの店員にそう言われなくても、自分は娘を信じている。
スンミの記事以外も、どうでもいい大した内容の物は載っていなかった。
「大丈夫か?相手の奥さんは家に怒鳴り込んで来た時に判っているが、人の話を聞かないで逆上しやすい性格だ。ハニが辛かったら、退席してもいいぞ。」
「大丈夫!スンミはそんな子供ではないから。」
___ コンコン・・・・
<お見えになられました>
緊張した。
人生で四度目の緊張だ。
一度目は結婚式。二度目はオレ達の最初の子供スンハが産まれる時。
三度目はスンミを自宅で産む事になった時。
オレはハニの事になると心が落ち着かないが、ハニとよく似たスンミの事でも同じだ。
0コメント