明日はまだ何もない明日(スンミ) 22

ハニちゃんも行ってらっしゃい。

ミラの事は私が付いているから心配しなくてもいいわ。

それにスンスクがこんなにミラから離れたがらないのだから、見る人がいてくれると思って安心してもいいわよ。

いくらスンミを溺愛している父親でもスンジョには話せない事だってあるだろうし、こういう時は母親が傍にいてあげた方がいいのよ。

お母さんにそう言われて家の事もミラの事もお願いして、私はスンジョ君に付いてスンミのいる静養所に行く事になった。

確かにお母さんの言うとおり、私は今まで実の母親がいたらいいと思った時も何度かあった。

お母さんは私を可愛がってくれている事も判るし、大好きだからこそ遠慮して言えなかった。

ソウルを出てから3時間くらい時間が経っている。

のどかな田園風景・・・・と言うのが私の中の静養所のイメージ。

のどかと言えばのどか・・・だけど、行っても行っても景色は変わらずこんな所にスンミが何日も住んでいるのかと思うと可哀想に思える。

「まだ遠いの?」

「そこに見えるだろ?」

見える?見えるのは平屋の、まるで田舎の幼稚園みたいな建物。

その敷地内に綺麗に手入れをされた畑があった。

「病院に畑?」

「農薬を使わないで野菜を作っているんだ。病状が安定した患者が、体調のいい時に収穫を手伝ったり手入れをしたり。社会復帰に向けての体力作りもしている。」

静養所なのだからそれもいい事なのかもしれない。

スンミもこんなにいい環境で美味しい野菜を食べて元気になってくれるといい。

「あれ?スンジョ君!スンジョ君!」

「何だよそんなに腕を叩いたら、側溝に落ちるだろう。」

「スンミが外にいるよ。」

静養所に来て一週間。

色白のスンミが、背の高いよく日に焼けた若い医師と、真っ赤に熟れたトマトを収穫していた。

病棟と思われる建物の裏手にある駐車場に車を停めて、スンジョとハニは車を降りた。

「オレはスンミの担当の医師と話があるから、先に会って来てくれるか?」

「そうするね。」

ハニはスンジョと別れると、家から持って来たスンミの愛読書と大好きなスィーツ店のお菓子の入った袋を持って、さっき見かけた場所に急いだ。

「スンミィ~」

「おい、ガリガリ。呼ばれているぞ。」

「ガリガリって・・・」

研修医のキムに言われて、その視線の方を見ると母が大きく手を振っていた。

「オンマ!オンマ!」

「おい!走るな。車椅子に座れよ。」

スンミが車椅子に座ると、危なくない程度にキムは早く車椅子を押した。

「元気そうね。少し日に焼けたみたいで。」

「そうかな?部屋の中ばかりいてもよくないからって、キム先生が自分が食べる野菜位収穫しろって煩いの。」

「何が煩いだ。スマホばかり弄っていただろう。」

研修医はそう言った後に、ハニに頭を下げた。

「スンミの担当の先生はスンジョ君が会っているけど、あなたは・・・・・・・」

「チョ先生の指導でお嬢さんの治療に関わっている研修医のキム・ヒョンジャです。」

「ヒョンジャって言うの?何ももったいぶって隠そうとしなくてもよかったのに。」

「言いたくなかっただけだよ。」

「それになに?ヒョンジャ(賢者)?名前負けしているじゃない。」

「煩い!」

たった一週間でスンミの表情が随分と変わっていた。

色が白かったスンミも、陽に当たっているからか、ほんの少し日焼けして元気そうで良かった。

熱もなさそうだし、こんなに明るい顔でいるスンミを見たのはいつ以来だろう。

「スンミさんのお母さん、室内に入りましょうか?部屋に案内します。」

ちょっとスンリと似たこのキム・ヒョンジャに、ハニは不思議とこの研修医のお蔭でスンミが元気になって来たのだろうと思えた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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