明日はまだ何もない明日(スンミ) 23

ヒョンジャはハニをスンミの部屋に案内すると、頭を下げて部屋を出て行った。

「感じのいい研修医ね。」

「でも口が悪いの。」

「アッパの口の悪さには勝てないと思うわ。」

「ちょっとスンリお兄さんに似てない?」

「似てないわ。スンリの方がカッコいいわ。」

この母に言う事ではなかった。

結婚してもう30年以上経ち孫もいるのに、いまだに父以外には目を向けないし興味もない。

その父に兄のスンリはそっくりだから、他の若い男の子はカッコいいとは言わない。

「あの研修医のお蔭かしら、スンミが元気そうになったのは。」

「ち・・ち・・違うわ。食べないとすっごく怒るのよ・・・・でも体重があまり増えて行かないの。」

赤い顔をして戸惑っているスンミの様子を見て、ハニは昔の恥ずかしがり屋のスンミに戻って来ている事にホッとした。

「辛かったでしょ?」

「オンマ?」

「相手が結婚している人だと判っていたら好きにならなかった・・・・って、よくドラマで聞くセリフだけど、そんなの分からないよね。人を好きになるのなんて、何が切っ掛けかは分からないもの。」

我慢していたのだろう。

母に会えて久しぶりに見せる明るい笑顔が、急に陰り大粒の涙を流した。

「判るよ。スンリに聞いたんでしょ?オンマとアッパの結婚までの経緯。」

コクンと頷くと、涙がハニの手の甲に飛び、ハニと同じ栗色の柔らかな髪が揺れた。

「諦めようと思えば思うほど諦める事なんて出来ないの。でも、スンミは若いのだから明日を見て行かないと・・・過去は振り返っちゃダメ。運命の相手なら、その人に繋がっている糸がどんなに絡まっても時間をかけて解く事が出来る。この間サン先生の話を聞いていたら、この人にはスンミはもったいないと思ったよ。」

ハニはスンミを昔の自分と重ねて見ていた事は言いたくなかった。

「ありがとう・・・・・・ここに来てからね、いろいろ考えたの。もし本当に先生が私の事好きでいてくれたのなら、きっとアッパたちにばれても来てくれるって・・・だってね、ここの場所を教えてあげたのに来なかったんだよ。毎日毎日何か連絡はないかと見ても返信も来ないし。そのうちに自分の心も落ち着いて来たら、何だかどうでもよくなっちゃった。」

どうでもよくなったと言っても、スンミにとってこれが初恋。

そう簡単には忘れる事などできない。

自分もそうであったように、傷付きながら一つずつ大人になって行く可愛い娘をハニはそっと抱き寄せて腰まで伸びた髪をそっと片方に纏めた。

「で・・・・・本当に何もなかった?」

「本当にって・・・・・・先生とアレをしたかしてないかって事?」

「うっ・・・まぁ・・・・結構スンミってドキッとする事を言うのね。まるでスンハみたい。」

「姉妹だもの・・・したよ・・・・・キス。」

「キ・・・・・・・キス!?」

「オンマ達だってしてるじゃない。子供が見ていない所でしているつもりかもしれないけど、所構わずしているのはみんな知っているよ。」

「所構わずって・・・・・一応・・・部屋の外では軽くしてるけど・・・・・いいえ、そんな事はどうでもいいわ。じゃあキスだけなのね?本当に・・・・・は・・・してないの?」

スンミは7人も子供を産んだ母が、真っ赤な顔をして自分とサンがどこまでの関係を持っていたのか聞きたがっている事がおかしくて仕方がない。

「したかったけど・・・しなかった。」

今にも倒れそうなほどさらに顔を赤くした母を見て、スンミは堪えきれず大きな声で笑い出した。

その顔はハニと似ているどころか、スンジョの顔とよく似ていた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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