明日はまだ何もない明日(スンミ) 24
他愛もない事を話して久しぶりのスンミの笑顔に、母としてハニはホッとしていた。
白くて細いと言うより青白くて壊れそうで細かったスンミも、この穏やかな空気の静養所で少しふっくらして、離れて暮らす事は淋しいが、これでよかったのだと思った。
体重は変わらないと言っているが、精神面が安定して来たから体全体が丸味を感じるのかもしれない。
「アッパとあの研修医は知り合いなの?」
畑をスンジョと研修医のキム・ヒョンジャが歩いている。
スンジョとヒョンジャは正反対に見えるし、実際にヒョンジャと過ごして感じた性格は全く違う。
「直接教えてはいないけど、スンリの友人みたいよ。」
ヒョンジャは口に出せないが、どこか昔スンジョと自分の事でトラブルのあった時のギョルと似ている。
「ねえ、スンミ。」
「なに?」
「あの研修医と付き合ってみない?」
「やだ・・・・・私ああいう感じの人はタイプじゃないわ。ちょっと・・ううん、意地悪で強引で・・・こっちのいう事を無視するんだもの。」
自分がスンジョの家に同居した頃の事を、ハニは思い出していた。
あの頃はスンジョに片想いをしていて、両想いになって結婚をするなんて思った事もなかった。
<大丈夫よ。絶対ハニちゃんとスンジョはお似合いなんだから。>
そうグミに言い続けられていた。
だから例えスンジョにどんなに冷たくされても、バカみたいにヘラヘラと笑っていた。
<お袋の思う壺に嵌りたくない。>
なったじゃない、おかあさんの思う壺に・・・・
あの研修医ならスンミを任せても、いいような気がする。
スンジョ君は嫌がるかもしれないけれど、彼をスンミの恋人候補にするわ。
オンマに会えてよかった。
アッパに会っても特に話す事もないし、いつも私を子ども扱いして世話を焼く。
「体温表を見る限り、熱も下がって安定している。薬はもう飲まなくてもいいが、具合が悪くなったらすぐに担当医に言うんだぞ。」
別にアッパがここの静養所での私の担当医ではないのだから、口出ししなくてもいいのに・・・・・
嫌いじゃないけど、私はもう小さなスンミじゃないから子離れしてほしい。
今の私は、アッパが結婚した年齢と同じだよ。
全くうちのアッパの目には、オンマしか映っていないのよね。
オンマと似ている私を、オンマと同じくらいに心配して世話を焼いて・・・・・
大丈夫だから。
私はもう大丈夫だから、スンギやまだ小さい双子たちと一緒にいてあげてよね。
――――― バンッ!
「おい!着替えは終わった・・・・・ブッ!」
いきなりドアが開けたヒョンジャの顔に、枕が投げ付けられた。
「何するんだ!」
枕が飛んで来た方を見ると、ベッドの向こう側にスンミがしゃがみ込んでこちらを睨んでいた。
「着替え中よ。女性の部屋だからノックしてほしいわ。」
「フンッ!お前のその白い牛蒡みたいな貧相な身体を見ても欲情もしない。」
「よ・・・・欲情ですって!・・いいから早く戸を閉めて出て行ってよ。」
毎日スンミとヒョンジャの会話が廊下の離れた場所まで聞こえる。
この声が聞こえると退院が近くなった患者たちの社会復帰を兼ねた野菜の収穫作業の時間が始まる。
今日の作業はさつま芋掘り。
夕方にはこの静養所の人たちとの焼き芋パーティが行われる。
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