明日はまだ何もない明日(スンミ) 27
___________ カーンカーンカーン
1日の仕事の終わりを告げる鐘の音
「5時か・・・・・」
ヒョンジャと話した時間は短かったが、今まで自分の中に溜めていた事を少し話しただけで、スンミの心は軽くなった。
「お前さ、自分の身体が弱い事は気にするな。この間、お前の両親が来た時ペク教授から聞いたんだ。」
「アッパから何か聞いたの?」
「特別な事は聞いてはいないが、お前のお袋さんが21年間ずっと身体を弱くして産んでしまって責任を感じているって。」
「オンマらしい・・・・21年間もそんな事を思っているなんて。」
一つの小さな事でも自分のせいにしてしまうオンマ。
身体が弱く産まれても、その事でオンマを責めた事はなかった。
「凄いな、お前のお袋さん。誰の所為でもないのに。」
「それが私のオンマなの。」
完璧なアッパの足りない所をオンマは持っていて、意外かもしれないけれどそんなオンマだから天才ペク・スンジョが存在する。
「オンマの事はパラン大医学部出身なら知っているでしょ?」
「知っているよ。ペク教授と妻の結婚までの話は。友人から聞かされたからな。」
友人?誰なの?みんなアッパに睨まれるのを怖がって、知りたいのに聞けないでいるのに?
「オレさ、スンリとは高校からの友達で、スンリの両親とソラの母親との事で悩んでいた時に話を聞かされたんだ。だから・・・お前の兄さんが、パラン大病院のナ先生を通してここに研修に来ているオレに頼み込んだんだ。妹を頼むって。」
「直接アッパに言えばいいのに。」
「直接言わなくても、教授は知っていたみたいだよ。スンリがナ先生に頼んだ事を。」
私はこの年齢になっても、親や兄妹たちに心配かけるんだ。
情けない・・・・・・
ヒョンジャと話ながら歩いていたら、気が付かないうちに自分の部屋の前に来ていた。
サンと付き合っていたと思っていた頃は、自分の心に壁を作っていた。
大人なサンに合せようと、声を出して笑わない様にしたり、DVDを観ても楽しむよりも感想を言う事に神経を使っていた。
サンの送り迎えで通っていた時は、両親が仕事で送り迎えが出来ない時に連絡を取り、サンと食事をする時は好きではない物でも無理をしてサンに合わせていた。
スンスクにサンといる所を見つかった時は「ナイショにして」と言った。
誰かに相談する事なく自分の考えで行った初めての事は間違っている事。
それをスンスクは心配していた。
決して美人ではない母が、子供の様な笑顔で納まっている家族写真が、部屋に入って来たスンミを出迎えた。
自分と6人の兄妹とその家族が幸せそうに笑顔を向けていた。
「いい家族写真だ。」
「かもしれないけど、アッパが不機嫌で・・・・」
「教授の写真嫌いは有名だからな。」
窓のカーテンを閉めて、ヒョンジャはスンミの横を通り過ぎた。
「過去を見ないで明日・・・・明日よりももっと前を見ろよ。明日はまだ何も出来事がないから、そこにスンミが新しい出来事を書いて行くんだぞ・・・・・じゃあ・・・・明日はオレはパラン大病院に行くから、点滴は別の医師だ。」
静かにヒョンジャが閉めた部屋のドアの音は優しくスンミの心に伝わった。
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