明日はまだ何もない明日(スンミ) 28
医学部棟に来るのは、ずいぶん久しぶりだな。
「あの痩せて色白の子が、オレの妹のスンミだ。」
学際に来る女子高生たちの目的は、パラン大医学部の人気者のペク・スンリ。
パランで伝説になっている医学部教授の若かりし頃と瓜二つの息子を見ようと、毎年学際は賑やかだった。
スンリにはソラという恋人がいる事は有名なのに、その人気は関係ないようだった。
スンリの指を指す方の団体は、いかにも金持ちっぽそうな女の子で固まっていたが、その中でスンリの妹スンミはちょっと違っていた。
他の女の子たちの手足と比べると細くて風が吹けば飛んで行きそう。
あの頃からあの雑誌の男と付き合っていたのだろうな。
「予定よりもひと月早く自宅で産まれた。その時は姉のスンハとオレも親父を手伝った。」
サラッと言うスンリを見て、ペク家の人間は普通とは違うと思ったのも事実だ。
オレなんて、実家が産科の病院だというのに、産科医にはなりたくない。
いっその事、医師になるのを止めようかと言っていたのに、スンリの妹が産まれた頃ってまだ幼稚園のはずだ。
伝説の人間の血を受け継いだヤツは凄いよ。
今もこうして歩いているオレを見つけて、子供みたいに手を振るペク・スンリ。
お前のそういう所は、母親似だな。
「よぉ!親父に会いに来たのか?」
「ああ、ペク教授は病院の方じゃないよな?」
「多分、一緒に行くか?オレも親父の所に行こうと思って。」
スンリと並んで歩くと、女の子に注目を浴びる。
左手の薬指に指輪があっても変わらないその人気。
「ソラが焼きもち妬かないか?」
「女の子たちはお前を見ているんだぞ。」
お互い女の子の視線は気にならない。
「順調か?」
「予定通り。お前の方はどうだ?スンミとうまくやっているか?」
「最近はだいぶ落ち着いて来て、いい感じに体重も増え始めたよ。でもさ、バレたら
「責任は取ってもらわないとな。親父のお気に入りのお前を、スンミとそれとなく会わせるなんて、親父にしたらすごい事だよ。だいたいこういう事は、お袋かおばあちゃんがやりたがるんだけどな。」
スンリの家族は仲がいい。
その一員にオレがなれるのかなんて、悪いが責任が重すぎるよ。
「スンミには言ってないよな。あの男の事を忘れさせるために、ナ医師と通じてお前がいる静養所に決めた事は。」
「言ってないよ。でも・・・嬉しかったよ、こんな機会を作ってくれて。」
そう、オレは高校生のスンミを見た時に一目ぼれをしていた。
スンリの様に彼女を持つのなんて面倒だったから、スンミへの気持ちを話して何年か経ってから出会いを作ってくれた時、その話に乗ってしまった。
「お前がオレの弟になる日が来るといいな。父方の祖父と母方の祖父の様に、親友から親戚に変わる事に憧れていたから。」
「どうなるか分からないよ。お前の妹は、まだあの男を引きずっていそうだから。」
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