明日はまだ何もない明日(スンミ) 36
病気などしそうにも見えないヒョンジャが、今自分の目の前で熱に魘されている。
医師の娘であり、姉も兄も医師で母は看護師でも、今まで人の看病はした事がなかった。
高熱のせいで汗で髪の毛が貼り付き、どうしてあげたらいいのか考えると、何をしても分からなくなりそうに頭が真っ白になって来る。
「先生・・・・大丈夫?」
大丈夫なんかじゃない事は、誰が見ても判る。
オンマ・・・いつもどうしてくれていたのか・・・・・・よく思い出せば、おでこがヒンヤリとして脇も冷やされていた。
洗面ルームに行き、タオルを濡らして持って来て、冷蔵庫の氷をビニール袋に入れて濡れタオルに包んでヒョンジャのおでこと脇を冷やして、その脇にしゃがんだ。
スンミはヒョンジャの顔を見ながら、小さい頃にオンマが仕事でいない時にこうしてアッパが自分を心配そうに見ていた事を思い出していた。
アッパはいつも自信たっぷりで、オンマに比べたら何もかも余裕があった。
階段を踏み外して畳んだ洗濯物を慌てて拾っていたオンマを、クスクスと笑って見ていたり、いつも静かに本を読んでいる姿が私の目には焼き付いていた。
自分を見るアッパのあの心配そうな顔は、天才医師で知らない事がない程の知識量でなにが心配なのかと不思議に思っていた。
ある程度大きくなってから、その心配そうに見るアッパのあの表情は私とオンマが病気になった時だけだとスンリお兄さんに聞いた。
サン先生もアッパと同じ顔して私を見ていたけれど、二人の違いは今になるとよく判った。
アッパは私が熱を出したり具合が悪くなった時心配になったのは、ただ子供の中で一番オンマに似ている私が具合が悪いと、消したい過去を思い出してしまう事と、自宅で産まれたばかりに身体が弱い子にさせてしまった事への後悔。
サン先生は私を通してオンマを見ていただけ。
冷静に考えれば、細かい事は「君はこうだったよね」「君ならこうするだろ」と、まるで昔から私の行動パターンまで知っているような言い方をしていた事は気が付いていた
私はサン先生にとっての、オンマの身代わりだと判っていた。
額の汗を拭きながらヒョンジャの顔をスンミは見つめながら、初めて人のためになる事をしてみたいと思った。
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