明日はまだ何もない明日(スンミ) 40
やだ・・・どうしよう・・・・熱があるみたい・・・
オンマ・・オンマ・・・
熱い・熱い・・・お水が欲しい・・・
スッと背中に入れられた手がスンミの身体を少し起こすと、冷たいカップが口に当てられた。
「ゆっくり飲めよ・・・」
アッパでもない兄のスンリでもない、弟のスンスクでもスンギでもない声に目を少し開けると、日に焼けた顔がそこにあった。
「先生・・・キム先生・・・」
「ったく、何でオレの熱がお前に移るんだよ。」
「わかんない・・・・・」
ゴクゴクとカップの中の水を飲むと少し楽になった。
「熱は38度・・・・教授とお前のお袋さんに連絡したから来てくれるよ。」
忙しいのにアッパが来てくれる・・・オンマもミラの世話があるのに来てくれるの?
「ほら、点滴だ。」
消毒綿が熱のある体に気持ち良く感じる。
ヒョンジャは意外と針の射し方が優しくて、父の様に無駄のない刺し方で安心出来る。
「オレは飲み薬と水分補給で治るけど、お前は長くかかるってスンリが言っていた。」
「お兄さん・・・・連絡したの?」
「さすがに直接教授に連絡が出来にくくって、スンリに連絡したよ。ソラの悪阻が酷いから入院したらしい。家にいると熱血なソラの親父さんが、わずらわしいから一緒に付いて来るかもしれないってさ。」
点滴の輸液が熱のある体に気持ち良いからなのか、ヒョンジャが傍にいてくれるからなのか、スンミは安心したように眠りに落ちた。
落ち着いて眠っているスンミに安心して、ヒョンジャは自分の仕事に戻った。
数日前に、熱を出した自分の看病をして移ったのだろうと思い、悪い事をしたとは感じるが、何だか二人が順番に熱を出した事が、子供じみているかもしれないが嬉しく感じた。
「オレ、医者なのに患者に看病されて移して、喜んでいていいのか?」
誰も歩いていない廊下で、独り言を言って歩いていると、静養所の駐車場に一台の車が停まった。
綺麗に磨かれた車から降りて来たのは、スンジョとハニとスンリの三人だった。
ヒョンジャが出迎える事もなく、事務所から飛び出して行く所長。
パラン大医学部教授の天才医師のスンジョが来る事を聞いていたのだろう。
離れた所からその様子を見ているヒョンジャにしたら、ヘコヘコと頭を下げている所長のその姿があまりにも滑稽に見えた。
そのままそこを離れようとして歩き出すと、スンリがヒョンジャを見つけて走って来た。
「よぉ、少しいいか?」
「あぁ・・・」
スンリの後から少し離れて歩いてくる教授夫妻は、一見全く対照的な二人に見えるが、その周りだけが柔らかな光に包まれているように見え、ただ並んで歩いているだけで見ている方が照れ臭くなりそうに仲が良く見える。
「今、所長から聞いたけど・・・・お前とスンミだけなんだってな、熱を出したのは。」
「何が言いたいんだよ。」
「二人で何をしていたんだよ。」
「別に・・・何もしてやいないさ。」
スンミに看病してもらって、オレの熱がスンミに移ったなんて言えやしない。
ただ、はっきりしているのはスンミもオレに興味を持ってくれた事。
だけど、これはスンリになんて話してやらない。
コイツは親友だけど、あのペク・スンハの弟だ。
小さな事も倍にして人に話すからな、オレの親友は。
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