明日はまだ何もない明日(スンミ) 43
「じゃ、オンマは簡易ベッドを借りる手続きをして来るね。」
「アッパと一緒に帰ればいいのに。」
「スンミと久しぶりに一緒にいたいのよ。」
「本当?アッパと離れるのは淋しくないの?」
「淋しいけど、慣れているわ。出張やら夜勤で一緒になれない時があるから・・・・じゃ、行って来るね。」
ハニは日勤の職員がまだいる時間帯に、簡易ベッドを借りにスンミの部屋を出た。
ここは静養所ではあるが重篤な患者がいないので、患者が使っている部屋に簡易ベッドを置いて、寝起きする事が出来る。
廊下を歩いていると、ヒョンジャと歩いているスンリとハニは出会った。
「どこに行くんだ?」
「簡易ベッドをね、借りに行くの。スンリもスンミと同じ部屋に泊まるの?」
「オレは、ヒョンジャの部屋に泊まるよ。いくら妹でも、スアみたいに小さな子供じゃないから、スンミの事を好きな男に見つかると後が怖いから。」
スンリは、並んで立っているヒョンジャをチラッと見て肘で突いた。
「スンリの友達なのね。私はスンリとスンミの母です。いつも娘がお世話になっているみたいで、ここに来て随分と元気そうな顔になって安心しました。これからもスンミの事をよろしくね。」
ニコリと笑うとスンミとそっくりで、差し出した手がヒョンジャと握手をしたいように見えた。
「ほら、お袋が手を出しているんだ。握手をしろよ。」
「ぁあ、よろしくお願いします。」
話には聞いていたが、ニッコリと笑ったその顔はスンミと本当によく似ていた。
特別に美人ではないけれど、その顔を見ていると目が離せなくなる。
大きな少し垂れた目が、笑うと何とも言えないくらいに引き寄せられる。
いかん・・・・この人は教授の奥さんで、スンミの母親だ。
子供みたいに大きく手を振って去って行く姿が、スンミと重なってしまう。
「おい、あれはオレおお袋で、スンミではないぞ。」
「判っているよ。」
「ここまで来たから、ちょっと一緒にスンミの顔を見に行かないか。」
「オレはいいよ。お前だけ行って来いよ。」
いいからいいからと、スンリに腕を引かれて逃げる事が出来ずにスンミの部屋の前に立った。
スンリがノックをして、返事を待たずにドアを開けた。
「ヒョンジャを連れて来た・・・・・・・ブフォッ!」
「もう、名乗って返事を待ってから開けてよ!」
着替えの最中のスンミに、スンリは枕を投げられた。
ヒョンジャは、胸元だけを隠した白いからだのスンミと目が合った。
毎日診察はしているが、いつも薄い服の上からの診察で、そのあまりに白い肌から目が離せなかった。
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