明日はまだ何もない明日(スンミ) 45
ハニがスンミの部屋の近くに来た時、それと入れ違いにヒョンジャが部屋から出て来た。
特に言葉を交わすわけでもなく、頭を下げただけの簡単な挨拶をした。
スンジョ君が、ああいうタイプの人をスンミのお見合い相手にしたのは意外だわ。
どことなくギョルに似た感じの男の子なのに。
今は、ギョルは他の病院に移ったが、昔の経緯を考えると知っている人は驚くほどヒョンジャはギョルに似ていた。
「ゴメンね。事務の人がいなくて手間が掛かって遅くなっちゃった。」
「ううん、大丈夫。スンリお兄さんもさっきまでここにいたの。」
頬の赤さは熱のせいでは無い事は、いくら出来の悪い看護師でも、女の勘に母の勘は当たる。
「さっき、この部屋を出て行った人と何していたの?」
「何って・・・・チョッと診察を・・・」
自分と似ている娘だから、考えている事は良くわかる。
相手が悪かった初めての恋愛から立ち直りかけている娘の表情の明るさに、この静養所に来て良かったと思えた。
沢山いる私たちの子供たちの幸せは私達の幸せでもある。
幼い頃に母親を亡くして一人っ子で育った私にしたら、こんなに賑やかで楽しい家族はいない。
「スンミ・・・・・ここに来て良かったね。」
「うん、何だか毎日が楽しいの。」
スンミの柔らかいスンジョ君とよく似たサラサラの髪の毛を梳きながらこうしている幸せを私も娘と過ごすのはずっと夢だった。
『毎日が楽しいの』と言っているスンミは、きっと彼に好感を持っていると思う。
スンミくらいの年齢の頃は、ミナやジュリと大袈裟に騒いで、何とかカップルにしようとしていただろうけど、追いかければ逃げる人を私は知っているからお節介はしない。
「髪の毛、伸びたね。」
「でもね、もう少し伸ばしたい。アッパがスンミの髪の毛はオンマと似ているから好きだ・・・って言っていたから。」
私にはそんな事を一度も言ってくれないから、ちょっとだけスンミに焼きもちを焼いてしまいそうだった。
「随分と優しいのね。オンマには、白い髪の毛が判るようになって来たな・・・・・って、言っていたのに。」
フフッと笑う母と娘。
こんな風に会話をしている姿を見るのが、スンジョは好きだった。
「スンミも早く幸せになってね。オンマもアッパもスンミの年齢には結婚したのよ。」
「おばあちゃんの陰謀だって・・・・・アッパが言っていた。」
「よく言うよね。嫌なら、陰謀であってもスルーする人なのに。」
スンジョ君は知らないと思っている、産まれたばかりの頃のスンミの事。
私は知っているよ、命が危なかった事を。
看護師なのに、変に我慢して自宅で産んでしまって、小さな小さなスンミを産んでしまった事をずっと後悔していた。
病院で産んでいれば、もしかしたらもう少し丈夫な子供に産む事が出来たかもしれない。
偶然にパク先生と小児科の先生とスンジョ君で話をしているのを聞いたの。
心臓が弱い
中学生になるまでに、大きな発作が起こらなければ大人になれるが、あまり無理をさせてはいけない
だから、知らない振りをしてスンミが病気にならない様に私なりに必死だった。
もう大丈夫だよね。
私たちが結婚した年齢になったし、色白のスンミがほんの少し日焼けしているのだから。
「はい、三つ編み完了!」
後からスンミを抱いていると、スンジョ君がくれた幸せがこれからもずっと続いてくれる事が判る。
「なに?オンマの息が首筋にかかってくすぐったい!」
「スンミの事、忘れないから・・・・絶対に忘れないから。」
「やだぁ~もう会えないみたいな事を言ってる。」
お母さんから教えてもらった勘が働いている。
スンミももうすぐお嫁に行くという、母親の勘が・・・・・・・
スンジョ君が一番可愛がっているスンミの花嫁姿を、スンジョ君はどんな顔で見るのか・・・楽しみになって来ちゃった。
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