明日はまだ何もない明日(スンミ) 47
「あなたがずっとスンミを診てくれていたのね。」
「診ていたというのか、指示通りにしていただけで。」
「ううん、それでもスンミがこんなに明るくなったのはあなたのお蔭よ。これからも、スンミをよろしくね。」
『これからも』と、母に言われてスンミの顔は赤くなり心臓は破裂しそうなくらいにバクバクとしていた。
「お袋、ヒョンジャはオレの親友でもあるから、これを機会に公私共々もっと深ぁ~く付き合って行ってくれよ。」
スンリは赤い顔をしているスンミを見ながら、ニヤニヤと笑っていた。
「勿論!スンリがいない時に来ても大丈夫よ。スンジョ君も私もスンミも、もうよく知っているから。」
スンリは肘でヒョンジャを突きながら、顔赤くしているスンミを見てまた意地悪を思い吐いた。
「ヒョンジャは独身だし、たまにパラン大の研究室に行く時があるから、ホテル代わりにオレの部屋に泊めさせてくれるか?」
「勿論よ、ね?スンミ。スンリの部屋の隣はスンミだから、判らない事があったらスンミに聞けばいいわ。」
スンリが妹スンミと親友ヒョンジャをからかっている事を知らないハニは、ただ素直な気持ちを口に出していた。
手を振って母を見送るスンミと、そのそばに立っているヒョンジャはお似合いの二人に見えた。
「ねえスンリ、彼・・・・良い人ね。」
「オレの親友だからな。」
「スンミが彼とお付き合いするようになるといいね。」
「本当だよ。アイツはああ見えて、恥ずかしがり屋で自分の気持ちを素直に伝えられないからな。」
「スンジョ君みたいね。」
そうさ、親父に似ているから、ヒョンジャがスンミと付き合えばきっとうまく行くよ。
親父も気に入っているし、スンミの傷付いた心も完全に完治するよ。
「じゃ、オレは他の入所者を診に行くから、スンミちゃんを頼むよ。」
玄関先で取り残された二人は、お互い顔を合わせようとしなかった。
「ほら、部屋に戻れよ、まだ熱が下がったばかりだから。」
「はい・・・・・」
「スンリに聞かれたよ、二人で何をしていたんだって・・・・静養所でオレとお前だけが熱を出したのはおかしいってさ・・・。」
何をしたのかはとてもじゃないけど、口に出すほどでもなかった。
偶然唇が触れただけであり、着替える時はただ看病の延長での事。
「お前さ・・・・男の着替えを平気で手伝えるのか?」
「平気って・・・・どうしてそんな古都を聞くの?」
「いやぁ・・・・オレの背中を拭いてくれたり・・・・普通は、引出しを開けて男の着替えを持って来るのは恥かしいだろぅ?」
スンミはハッとした。
兄妹が多いスンミにしたら、スンリやスンスクとスンギの着替えを引き出しにしまったり、スンリは夏によくシャワーを浴びた後に上半身裸で歩いたりしているのをよく見ていた。
「ごめんなさい。兄弟が多いから、そういう事をあまり気にしたりした事は無かったの・・・・・でも・・・・本当は看病する事で頭がいっぱいだったから。」
今思い出せば、色白の兄とは違って日に焼けた肌にドキドキはしていたが、熱でぐったりしていたヒョンジャの為と思って自分なりに世話をしていたつもりだった。
「阿婆擦れだと思った?」
「またそれを言う・・・お前は阿婆擦れじゃない、ただ男の着替えを平気で出来るから、オレは男と思われているのかそれともただの物体と思われているのか、どちらだろうと思っただけだ。」
ちょっとからかったつもりで言ったヒョンジャは、そう言うと振り返ってスンミの顔を見た。
その言葉に顔を赤くしているスンミを見て、ヒョンジャは慌ててスンミのおでこに手で触れた。
「熱がまた出たのか?」
___パシッ!!
その手をスンミは払い除けた。
「ゴメン・・・・オレに触られるのは嫌だよな。」
「ち・・・・違う・・・・嫌じゃない・・・・」
誰もいないわけでもないのに、そこは二人だけの空間になっていた。
ずっとスンミに片想いをしていたヒョンジャと、初めて年相応の相手からの告白に緊張の連続のスンミ。
嫌いな相手には心を開かないスンミの初めての経験に、ただヒョンジャの行動に戸惑っていた。
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