明日はまだ何もない明日(スンミ) 48
一週間で一番嫌な時間。
私は拒食症の人と同じカリキュラムの毎日をここで過ごしている。
その中で一番嫌な事は、体重測定。
元々、痩せていて気にした事は無かったけど、痩せすぎだと言う事。
身長が168cmで43キロ。
確かに痩せすぎかもしれない。
「さぁ・・・・次はペク・スンミさんね。」
目を瞑ってそっとヘルスメーターの上に乗った。
「ハァ~、スゥ~」
「息を吐いて吸っても、体重の変化はないぞ。」
誰が言ったのか聞かなくても判る、私の心を乱すキム・ヒョンジャ先生。
その仄かに香るローションの香りは、あの看病をした時に嗅いだ部屋の中の匂いと同じ。
体重を計測しても、読み上げたりはしない。
スンミの様に痩せすぎている人がいれば、体重を減らすために入所している人もいる。
「体重の変化はないけど、顔色もいいし食事量も少しだけど増えて来ているから、血液検査をして結果次第では退所を考えてもいいよ。」
「退所って・・・・・ここを出るのですか?」
ヒョンジャはなんとなく判っていた。
先日の発熱が快方に向かい始めた頃から、ここに来た頃よりも体力も出て来ているから回復も早くなっている。
スンミもヒョンジャも、診察をした医師の言葉に淋しさを感じた。
「この退所の判断は、ペク先生・・・・スンミさんのお父様がこちらに一任してくださっているので。とにかく、思ったよりも早くここを出られる事が出来て良かったね。」
退所を喜ばないといけないのに、嬉しくないなんておかしいよね・・・・私。
「キム先生、スンミさんの採血をお願いしますね・・・・はい、次の方・・・・・」
事務的な診察ではあるが、この静養所は普通に生活が出来るようにするための場所。
社会復帰が目的なのだから、長期入所をする人はいない。
採血をすると言う事は、数日以内に退所確定が出ると言う事。
「こっちに・・・・・」
駆血帯を巻かれ、消毒綿で針を刺す所を拭かれているとスンミは涙が出て来た。
「泣いているのか?小さな子供じゃないから少しくらい痛くても我慢しろよ。」
「違うわ。何よ、この駆血帯・・・・・派手過ぎておかしくて涙が出て来たのよ。」
「いいだろう、どんなの使っても。今は色も選べるし・・・・・これはハワイアンシリーズだ。」
「ハ・・・・ハワイアン?ハワイで買って来たの?」
「ネットだ。made in Japanだ。ほら針を刺すぞ。」
白くて細い腕にくっきりと浮き出る血管。
針を刺すのも怖い程に色が白い。
畑を散歩したりして陽に焼けてはいるが、それでも他の人と比べると色が白い。
「あまり沢山採らないでね・・・・・・倒れちゃうから。」
「倒れたらオレが世話をしてやるよ。」
「えっ?」
「いや・・・・・冗談だよ。他の看護師に頼んでやるから・・・・・ほら、これで十分検査が出来る。暫く押さえていろ。」
冷たいヒョンジャの言い方にスンミはまた違った涙が流れて来た。
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