明日はまだ何もない明日(スンミ) 54
送ってしまったメールを戻す事は出来ないが、送った事に後悔は無かった。
今度はスマホの電話帳を開けて、登録してある一つの場所を押した。
「あっ・・・・・スンミ・・・・お・・おばあちゃん?アッパかオンマは今病院?・・・・あのね・・・・」
スンミは決心をした。
生まれて初めてスンミにしたら思い切った決心だった。
「ふぅー・・・・・・いいよね・・アッパ怒らないよね・・・・私だってもう大人だから自分の事は自分で決められるから。」
柔らかで長い髪をゴムでギュッと縛り、スンミは背筋を伸ばして部屋を出た。
何度も短い時間だけれど舞台で踊った。
緊張をした事などなかったし、緊張する事も知らない。
多分、今のこの胸がドキドキして足が地に着かなくてフワフワとしているのが緊張というものなんだろうな。
「あの・・・・・」
「君はペク教授のお嬢さんのスンミさんですね。」
「はい・・・」
ペク教授の、と付く事に抵抗があった。
大体の人が、アッパと懇意にしたいから私にヘコヘコとしてくる。
「所長・・・さんですか?」
「そうだけど、何かありましたか?」
スンミはゴクンと唾を飲み込んだ。
職員の詰所は、所長だけではなく多数の他の職員がそこにいて、全員がスンミの方を向いた。
「退所・・・・・今してもいいですか?」
「は?教授が先週見えた時に血液検査の結果で決めていいとおっしゃって・・・今日の結果を見ても、何も問題はないけど週末にご両親がいらしてくださるまではいてもいいですよ。」
「両親も誰も来ません。」
幾ら普通の生活が出来るようになったと言っても、退所するのに一人ではペク・スンジョの娘のスンミではなくても許可は出来ない。
「あの・・・・・ここで、働かせてください。」
そこにいる所長と職員は驚き言葉が出なかった。
「私は、何も出来ませんが・・・畑を耕したり収穫したりして、お手伝いをする事から・・・・・・・」
ここにいる間、畑に出た事は数回だけ。
その時はヒョンジャが付きっ切りで世話を焼いていた。
他の職員からは、恋人同士みたいだと良くからかわれた。
土に触れるどころか、種を植えて目が出て花が咲き実を結ぶのを見たのは、ここに来て初めての事だったが、その時の感動を忘れたくなかったが、それよりもヒョンジャの側から離れたくない気持ちに気が付いた。
静まり返った部屋の勢いよく開いたドアから、ヒョンジャが入って来た。
「みんなどうしたんですか?こんなに静かだと、気味が悪いじゃないですか・・・・それと、スンミお前何をしてるんだここで。」
部屋に医師として来てくれるヒョンジャには特別にドキドキはしないが、今から言おうとしている事を思うと、心臓の容量がオーバーヒートしそうだった。
「キム・ヒョンジャさん、私ここに残って仕事をします。いいえさせてもらいます。」
「何がお前に出来るんだよ。医師でもないし看護師でも理学療法士でもなければ薬剤師でもない。厨房か?」
「いえ、畑の仕事を手伝いたいの・・・・・それから、私と結婚してください。」
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