明日はまだ何もない明日(スンミ) 61
「知ってたの。でもね、最初にここに来てキム先生を見た時から、こうなる運命だったのかもしれない。」
首に掛けたチェーンを指にクルクルと巻き付けてそれをまたはずす。
ふた月ほど前までは、いつも俯いて何かを考えていたスンミの顔が吹っ切れたように明るい表情になっている。
もうスンミは、いつも保護してくれていた両親の手から離れ始めている。
スンジョは少しそれが淋しそうに感じるが、子が成長していくためには仕方のない事だと判っていた。
「サン先生が好きだという気持ちとは違うの。ずっと一緒にいたいと思えるの。」
「サン先生とは一緒にいたいと思わなかったの?」
「何だろう・・・・・大人の男の人への憧れかな?アッパは嫌いじゃないけど、何でも出来て完璧でとても素敵で大好きだけど、あまりにも完璧すぎて・・・・疲れるの。ごめんなさい・・・・疲れるなんて言っていいのか判らないけど、サン先生もキム先生も完璧じゃないし、もっと上を目指そうとしているところが、一生懸命でなんだか共感が出来るの。キム先生に告白をされた時に、ちょっとびっくりして驚いてすぐに返事をしなかったの。だって初めての事だから・・・でもね人を好きになるのって、そんな難しく考えなくていい、人を好きになるために素直になろうと思ったのよ。」
言い方は違うが自分も似たような事を言った。
今日は好きではな無くても、明日には好きになっているかもしれないから。
スンジョとハニの前に二人並んでいる姿を見ると、サンと無理やり話してしまって恨むのではないだろうかと思っていたスンミが、意外にも楽しそうで幸せそうにしているのを見ると、これでよかったのだと思った。
「教授、お義母さん、スンミさんと結婚を前提にお付き合いをしたいと思いますが、許していただけるでしょうか?」
自分はいきなり結婚宣言をしたが、あれは間違っていたかもしれないが、向かい側に座っている娘の顔を見ると、昔自分が親たちの前で言った事を忘れそうなほどに輝いていた。
「大学はどうするんだ?休学中のままにしてあるぞ。」
「キム先生は大学に復学をと言ってくれるけど、私はここで畑の手伝いをして私の知らなかった事を調べたい」
父親と母親に守られてここまで大きくなって来たが、もう成人した一人の人間として、これからは生涯を共にする人と進んで行く。
体調に無理なく過ごす事が出来るのなら、それはそれでようやく見つける事の出来たヒョンジャの隣にいる事が、スンミのこれからいる場所だから、その気持ちを見守ろう。
復学して頑張って、最後まで行こうとしていた大学できちんと勉強をして、それから結婚に向けて考えて行く事を、父と母と娘と娘が好きになった青年の4人で決めた。
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