明日はまだ何もない明日(スンミ) 62
いつもと変わらぬペク家の夕食。
ただ数年前から変わったのは、家族が減ったり増えたりした事。
スンスクが産まれる少し前に、スチャンが持病の心臓で他界し、長女のスンハが結婚して家を出て、その一年後にはスンジョとハニに双子が誕生し家族が増えてまた賑やかになった。
その数年後には長男のスンリが、ギョンス先輩とヘラ夫妻の娘ソラと結婚して家を出た。
スンミの弟でスンスクが結婚をして家族が増えて、数ヶ月後には子供が産まれる。
相変らずハニは失敗ばかりだが、それ以上にグミと二人で沢山の子供たちの世話で賑やかだ。
その賑やかな家からまた一人、独立をする。
静養所にいる間は、いずれ帰って来ると思っていたから淋しくはないが、スンジョが計画した見合いが上手く進み、スンミが大学を出たら結婚をする事になった。
大学は辞めて、静養所で畑をしながらキム・ヒョンジャの妻として過ごしたいと言ったが、スンジョもハニも勿論婚約者のヒョンジャも反対をした。
休学中の大学を辞めて、静養所で畑をして行くのもいいが、いつまでもヒョンジャが静養所にいるわけでもないから、一度戻って来て復学して大学を出る様にと。
あと一年経てば、スンジョが一番可愛がっていた娘のスンミは嫁いで行く。
ここでスンジョの悩みがあった。
スンミの結婚の話は、グミには秘密にしていた。
ハニに口止めをしてはあるが、グミは妙にそういった事に特別なアンテナでもあるのか、微弱電波でも受信が出来るのかすぐに気が付かれてしまう。
「ご馳走様。書斎にコーヒーを持って来てくれるか?」
「ちょっと遅くなってもいい?スンギが塾から帰って来たら、ご飯を用意しないといけないから。」
「お袋、ハニと話をしたいからハニの代わりにスンギの食事を用意をしてくれるか?」
「いいわよ。でも最近あなた達、私に何か隠していない?」
グミも顔色一つ変えないスンジョに聞いても、何も感じ取れない事が判っているから、ハニの顔の様子を見ながら聞いて来た。
「べ・・・・別に・・・・お母さん、隠し事が私に出来るはずがないですよ。」
「そう?前にもまして、やたらと二人でコソコソと話しているし・・・もしかしてスングとスアの兄妹が出来るとか?」
一番下の双子たちは、自分に弟か妹が出来るのかと思って一瞬目を輝かせた。
「そ・・そんな・・・もう私たちは・・・・・そんな歳でもないですから。」
スンジョに助けを求めようとするハニを無視して、スンジョはサッサと立ち上がって書斎に向かった。
自分が何か言えば、グミがまた何かを突っ込んでくる。
素知らぬ顔をしていれば諦めるだろう。
お互い良い年齢になっても、お節介を焼きたい人と焼かれたくない人で、時々険悪になる事があった。
――――― コンコン・・・・
スンジョが返事をしなくても、ハニはそっとドアを開けていつも入って来る。
その途端に、スンジョの書斎がコーヒーの香りが漂い、机からミニ応接セットの方に場所を移動する。
何か仕事をしている時は、コーヒーの置き場を聞くが、何もしていない時はミニ応接セットのテーブルの上に置く。
「病院の方のお前のシフトと、オレの講義の時間と病院の方に行っている日とで照らし合わせて、ヒョンジャのご両親と会える日はこの数日しかない。向こうも病院を経営しているから、あまりこちらの都合を合わせるわけにはいかないが、スンギ達の学校の用事と重ならないか?」
ハニはスンジョが作った一覧表を見て、時間まで細かくスンジョが把握している事に驚きながらも感心した。
「凄いね・・・スンジョ君の頭の中はいったいどうなっているのか知りたい。」
「お前と同じだ。ただ普通より記憶力がいいだけだ。」
「えっとね・・・・この日は、スンスクがどうしても大学の方の関係で、ミラの付添いが出来ないって言ってたけど・・・この時間の看護師は・・・・ヒスンだから、頼んでもいいけどうちの大切なお嫁さんだしね・・・・・・」
「そうだな・・・・いつ容態が変わるか判らないからスンスクの都合が付く日じゃないとダメなら、この日ははぶいておこう。」
書斎のドアに耳を当てて、中を伺う人影があった。
その人影は、自分に隠して何かを進めている事が何なのか、数日前に静養所から戻って来てからの話を聞きながら、ある勘が働いた。
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