明日はまだ何もない明日(スンミ) 63
玄関にデンと置かれているカメラバック。
グミが撮影旅行に行く時に持って行くカメラバックだ。
「お母さん?撮影に出られるのですか?」
「え~ぇ、ちょっとね・・・・・知り合いの娘さんの結婚が決まって、式で使う写真を写して欲しいって。一泊・・・か二泊して来るけど、家の事はお願いね。」
「大丈夫ですよ。気を付けて行って来てください。」
妙に張り切っているグミの様子をハニは特に気になっていなかった。
いつも、撮影旅行はひと月ほど前からハニの勤務のシフトに合わせてくれていたが、今回は急な仕事が入ったのだと思っていた。
「お袋、撮影旅行の事は前に言っていたか?」
「急な仕事なのかもしれないね。」
「そうか?なんだかおかしい・・・・・まさか・・・予感が当たらなければいいが。」
スンジョは何かまたグミが行動を起こすのではないかと思っていた。
自分とハニが結婚した三十数年ほど前のあの時と同じような嫌な予感を感じていた。
ここね、スンミがいる所は。
グミはスンミがいる静養所にこっそりと来ていた。
カメラの望遠機能を使って、建物の中にいるだろうと思うスンミを探すが、その姿を見つける事は出来なかった。
「可笑しいわね。スンジョもハニちゃんもスンミはまだ静養所で生活をしているって言っていたのに。」
建物の遠く離れた道から見える所を、何度も見るがそれらしい姿は見つけられない。
場所を変えて一通り見るがスンミはいない。
諦めかけ時、スンミの声が聞こえた。
それも外で誰か若い男性と話しているような楽しそうな会話が聞こえて来たのだった。
そちらの方を見ると、すぐ傍に有る畑にシートを広げて顔立ちのハッキリした研修医らしい好青年と話をしているスンミがいた。
「来週、一緒に両親に会ってくれないか?」
「えっ・・・緊張する・・・・」
「大丈夫だよ。そんなに偏屈でも厳しくもない親だから。スンミの話をしたら、お袋が会いたがっていた。」
お袋が会いたがっていた?
何?・・・・何があるの?
「指輪も買わないと。今回はサイズをちゃんと測って作ってもらわないと、家事をしているうちに抜けてしまったら困るしな。」
家事をしていたら抜けてしまったら?
まさか・・まさか・・・・スンミお嫁に行くの?
「この指輪もサイズを直してもらってもいい?」
「勿論、それは婚約指輪のつもりだから。」
えっ・・・・・
グミは数メートル先ではあるが、カメラの望遠を使ってそちらの方をはっきりと見ようとズームをした。
その光景に、思わずシャッターを切ってしまった。
スンジョに、この今撮ったショットの説明をしてもらわないとね。
こんな人の来ない所で若い二人が身体を密着させてキスしている証拠写真の説明をしてもらうわ。
あなたとハニちゃんが、スンミの事でひた隠している事は、この事だったのね。
ファン・グミを侮(あなど)らないで欲しいわ。
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