明日はまだ何もない明日(スンミ) 67
教授として自分と無関係の学生たちの為には講義を休むわけにもいかず、かと言って出張を個人的な理由で止めるわけにもいかず、緊急の手術も入るとなると限られた日しかスンジョにはなかった。
ハニのシフト表は、ミラの事もあり空白が多い。
ヒョンジャからのメールで、彼の両親の都合のいい日は来週しかなかった。
「来週末か・・・・・・」
もう少し先にしたい気持ちもあったが、自分がこの男ならスンミに普通の若者らしい楽しみを体験させてくれるだろうと思っていたが、娘がまた一人自分の手から離れて行く事を思うと寂しい気もした。
机の引出しに入っていた、自宅で産まれたばかりのスンミを抱いたハニと、その場にいた幼いスンハとスンリの笑顔の写真。
この日から何年経ったのだろう。
この翌年には父スチャンが他界し、その数日後にはスンスクが産まれた。
そのスンスクももうすぐ父親。
ハニと出会って、自分の思い描いた人生とは違ったけれど、今はとても自分が一番幸せだと言える人生だと思っていた。
人を好きになる事など考える事が出来なかったが、ハニと出会って人として必要な事を教えてもらった。
ハニと出会う前までは、何かを守りたいとか失いたくないという感情に乏しかった。
「全く、ハニが言った通りに刺激ある生活をさせてくれたよ。お前の事がどうして好きになったのか今も判っていないのに、結婚をしてスンハとスンリの父親になり、三人目の子供をこのオレが自宅で取り上げるわ・・・・・スンスク・スンギと四十代も終わる頃に、長女はデキ婚・・・今は授かり婚というのか・・して孫の誕生と同じ日に双子の父親になるし・・・・・いい人生だよ。」
一人っ子だったから、子供は沢山欲しいの。
それに、一人しか子供を産む事が出来ないミアの為に、私は子供を沢山産みたい。
仕事をしているからお袋も子育てを手伝ったが、ハニのその明るさや素直さは7人の子供が皆受け継いでいる。
良かったよ、オレの性格と似る事が無くて。
___ コンコン
「スンジョ君、コーヒーを持って来たわ。それとね、お母さんがケーキを買って来てくださったの。」
グミがハニに続いて入って来た事に気が付くと、その不敵な笑みに嫌な気分になった。
「珍しいな、お袋も一緒にコーヒーを飲むなんて。」
「そう?私の大切な娘とスンジョと一緒にお菓子を食べながら、これからの残りの人生を相談しながら行かないといけない年齢ですものね。」
含みのある話し方で平然として言うグミに、益々何かまた企んでいるような気がしてならない。
「何かね・・・・・・噂なんだけれど、うちの孫たちの中で誰かが結婚するらしいって・・・・・」
「噂だけだろ?そう言う年齢の子供がいる家庭は、そんな話がよく出るからな。」
聞き出し作戦できっとグミは何かを知りたいのだろう。
「そうそう・・・ちょっと旅行をしたらいい写真が撮れたの。スンジョ達も見たい?」
「別にオレはお袋の写真には興味がないからな。これからハニと仕事の事で話があるから、ケーキを食べたら出て行ってくれるか?
スンジョがグミが話したそうにしているのを避けるようにそう言うと、無言の笑みのグミがミニテーブルの上に、大量の写真の束をドサッと取り出した。
0コメント