明日はまだ何もない明日(スンミ) 69
スンミが産まれてから21年もの間、話さなかったし話すつもりもなかった。
大病をしたら命の保証のない子供だったから、ここまで何事もなく大人になるとは思えなかった。
医療知識のないグミに判りやすく簡単に産まれた時のスンミの状態とその時の小児科医の診断について話をした。
「教えてくれればよかったのに・・・・」
グミより先にハニが言葉を発した。
「ハニ・・・・」
「ハニちゃん・・・・」
「私ってそんなに母親としても頼りが無いのかな?看護師でもあるんだよ。」
何も知らずただ身体の弱いスンミの健康を心配していた。
身体が疲れたら熱をすぐに出し、そのたびに学校に行きたがっていたのに、泣かせて学校を休ませた。
スンハやスンリがスンミの勉強を見て、ハニはそんな子供たちをだまって見守っていた。
「それは違う。お前は子供たちにとっては大切な母親だ。学校を休みがちで、友達のいないスンミがたまに登校しても馴染めず落ち込んでいると励ましていたじゃないか。」
「そうよ。スンミが言っていたわ『悲しい時にオンマが作ってくれた玉子焼きが美味しい』って。」
「スンミが?」
「『今日は卵の殻が幾つ入っているのか・・・・・どれくらい甘いのか・・・・又は塩辛いのか・・・・と考えると、悲しい気持ちが消える』と言っていたわよ。」
「複雑・・・・別にスンミを励ますつもりで作った玉子焼きじゃないのに・・・・オンマの玉子焼きが食べたいと言っていたから。」
グミの話がさっきまでの重い空気を軽くしてくれた。
「スンミね、多分知ってるよ。自分が母親になれない事。」
「知ってる?」
「前に私に言ったの。スンハお姉さんやミラが羨ましい・・・・・って。私はどんなに願っても、お母さんにはなれない・・・・・」
娘は母親には小さな事でも話すが、幾ら可愛がっても父親には話せない事もある。
母親に話せない事は父親に、両親に話せない事は祖母のグミや祖父ギドンか兄弟たち。
それが、ペク家が理想の家族と言われよく取材を受ける理由。
「スンジョの腕でも、何とかならないの?」
「他の医師ならきっと出来るかもしれないが、オレには無理だ・・・・・」
「どうして?スンジョ君は天才じゃないの。それにパラン大病院が開設されて以来の腕を持っているんでしょ?」
「出来ない・・・・・・他の医師に任せる事も出来ないし、ましてや自分のこの腕でスンミを守る事は出来ない。例え99%の成功率でも、残りの1%が助からない確立としても、スンミを亡くす事の方が一番怖いから。」
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