明日はまだ何もない明日(スンミ) 70
クス・・・・・クスクス・・・・・・
ブッ・・・・・・
ハニとグミが噴き出すように笑い出した。
そこが狭い書斎で、子供たちが部屋で起きてしまわないかと思うくらいに大きな声で笑い出した。
「可笑しい事でも言ったか?」
スンジョのその言葉にまたグミとハニは顔を見合わせて笑い出した。
「成功率30%の手術でも成功出来る腕を持っているのに、99%の成功率の手術が出来ないって・・・・・・」
「スンジョもただの父親ね。」
「今までで一番信じられない・・・・・・」
「悪いか・・そうだよ、オレだって普通の父親だ。スンハが結婚前に子供が出来た時もショックだが、スンミがサンと付き合っていると判った時、どんなにショックだったか。自分の子供の事になると、オレは冷静でいられないんだよ。」
「本当はそれだけじゃないんでしょ?」
ハニはスンジョと一緒に暮らし始めた高校三年の時以来、初めてスンジョが動揺したのを見た気がした。
「何が言いたいんだよ。」
「自分の子供・・・と言うだけじゃないでしょ。」
ハニは何をグミが言いたいのか気になり、二人の顔を交互に見ていた。
「そうだよ、お袋の思っている通りだ!」
そう言ったきりスンジョは、ムスッとしてコーヒーを飲み始めた。
「なに?なんなの?お母さんとスンジョ君だけが分かって、私は分からないの?」
そんな大人たちの話を中断するかのように、スンジョの携帯が鳴った。
「はい、ああパク先生大丈夫ですよ・・・・・はい・・はい・・・判りました。すぐに妻と病院に行きます。」
スンジョの顔がいつもの医師としての顔に変わった。
「ハニ、病院に行くぞ。」
「急患?パク先生って・・・・産科でしょ?」
「スンジョ、もしかしてミラの事?」
「陣痛が始まったらしい。スンスクが付いているけど、まだ若い彼一人じゃ不安だからオレ達に来て欲しいって。」
ミラの陣痛が始まったらしい。
痛みもあまり感じなくなっているミラだから、モニターが反応をしたのだろう。
スンジョは急いで机の周辺を片付け始めると、ハニは飲みかけたコーヒーカップをトレイに乗せた。
もう何年もこうして病院から緊急に電話が入ると、二人は何も言わずに同時に準備をする。
「片付けは私がやるから、ハニちゃんは急いで着替えていらっしゃい。」
「すみません・・・・・ミラのご両親にも連絡を・・・」
「それも私がしてあげるわ。スンギやスング達に、明日の朝ミラとスンスクに赤ちゃんが産まれるから病院に行ったと言っておくわ。」
慌ただしく家を出て行く二人を、心配そうにグミは見送った。
あの冷たかったスンジョがハニちゃんのお蔭で自分の娘に弱い父親になったのは、人としても医師としても心の通った人に見えて良かったと思った。
「大丈夫よ、ミラは元気な赤ちゃんを産むから。スンスク、頑張るのよ。あなたはまだ若いけど立派な父親になれるわ。」
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