明日はまだ何もない明日(スンミ) 71
「ありがとう、お昼過ぎにね。」
「また迎えに来るよ、ペク教授によろしく伝えて。」
早朝のまだ冷たい空気の中、ペク家の門の前でスンミは一台の車から降りた。
車を運転していた人はヒョンジャ。
門に入って行くのを見届けてから行こうと思っていたが、中々その場を動かないスンミを不思議そうに思い窓を開けた。
その時、急にスンミがヒョンジャの方に近づくと唇に軽いキスをした。
「お姉ちゃん!」
「ぅわぁ~!」
スンミはハッとして振り向くと、パラン高校の制服を着た弟スンギと、小学生の双子のスングとスアが顔を赤くして立っていた。
「スンギ!!それとスングとスア!見てたの?いつから?」
思春期のスンギは言葉も出ないが、その代わりにスンミとよく似た顔のスアが、お茶目な顔で大人な二人を茶化すように言った。
「そのお兄さんの車から、お姉ちゃんが降りた時から見ていたよ。」
「うん、お姉ちゃん達なんだかアッパとオンマみたいにラブラブだねと言っていたらキスしたんだよ。」
スンギだけは姉の顔が見る事が出来ず、そっぽを向いていた。
双子たちに掴まれば、ヒョンジャが家に帰れなくなる。
スンミはヒョンジャの車から離れた。
「アッパとオンマはいないよ。」
「いないの?今日は仕事は休みのはずでしょ?」
医師の父と看護師の母は休みでも病院から呼び出しがあればすぐに出かけてしまうが、二人が揃っていない事はあまりなかった。
「昨日の夜に病院に行ったんだよ。スンスク兄さんの赤ちゃんが産まれるかもしれないって。」
普段ならスンギは一人でパラン高校に行く。
双子たちは少し遅れてハニかグミに見送られて登校をしていた。
「スンスクって、話していた弟だよね?」
「うん、ゴメンね・・・・今日はアッパたちと会えそうもないみたい・・・・」
「いいよ、都合が付いたら連絡してくれれば・・・オレの両親にも伝えておくよ。」
「いいの?」
「ペク家は今それどころでもないだろ?スンミも連絡を家で待つんだろ?」
姉と親しげに話しているヒョンジャの間に入る様に、スアが通り過ぎながら話した。
「もう少ししたら、おばあちゃんが病院に行くって・・・・お姉ちゃんも一緒に行ったら?私たちは学校に行くからね・・・・」
まだ小学生のスアは、ちょっと大人なぶって澄ました顔で二人の横を通り過ぎた。
その後ろをスンギとスングが、王女様に従うように付いて行った。
「早く家に入ったら?君のおばあさんと一緒に病院に行った方がいいよ。」
スンミは名残惜しそうではあったが、弟の妻のミラは友達のいないスンミにとっては一番の親友でもあった。
ヒョンジャに手を振って、スンミは門の中に入って行った。
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