明日はまだ何もない明日(スンミ) 72
ミラはスンミの弟スンスクの妻で年上ではあるが妹で、親友と言える人がいないスンミに取っては大切な親友でもあった。
「ただいま・・・おばあちゃん?」
家の中は静かだが、グミが忙しく動き回っている様子が判る。
スンスク達の部屋から携帯を片手に、沢山の荷物を持って出て来た。
「お帰り・・・今ね、スンジョから電話があって産まれたって。」
「産まれたの?ミラは・・・ミラは大丈夫?」
「ミラの様子はまだよく判らないけど、ハニちゃんがこの荷物を持って来て欲しいって。」
本当は女の子が産まれたの?男の子が産まれたのって聞かなくてもおばあちゃんが教えてくれるのに、何も言わないってよくないのかもしれない。
「私も一緒に行ってもいい?」
「スンミが疲れていなかったら・・・・・」
疲れていてもミラの為なら平気。
元々、入院する事になったのだって私が原因なんだから。
スンミは、グミを手伝って荷物を運び出し、グミの車に積み込んだ。
「女の子が産まれたのよ。とっても元気な声で泣いているそうよ。」
そうグミが言ったきり、いつもは楽しそうに話すグミは顔を強張らせて運転に集中していた。
ミラには幸せになって欲しいと思うのは、スンミだけではなくてグミもペク家の家族全員が願っている。
人生の期限が判っているからその間だけでも、ミラが幸せで楽しく生きて欲しい。
「オンマが・・・・・・」
病院の玄関口で厳しい顔をして立っているハニを、スンミはすぐに見つけた。
車が停まると、ハニは走って来た。
「スンミも来てくれたのね・・・・お母さんありがとうございます。」
いつもの母と様子が違う。
声が震え、色白の顔は青く目が潤んでいる。
「ミラの具合はどうなの?」
グミもそれが一番知りたかったし、それはスンミも同じ。
「意識がね・・・戻らないの・・・麻酔科の先生は、薬の量は問題ないから数日後には気が付くだろうって・・・・でもね・・・見ていて辛くて・・・・スンスクがね・・・あの我慢強くて泣かないあの子がね泣いているの。仲の良かったスンミが来てくれて助かったわ・・・・・・スンスクとミラの傍に行ってくれる?」
兄妹の中で一番スンスクと仲が良かった。
学校を休むと、弟なのに休んだ箇所の勉強を一緒にやってくれた。
いつもニコニコと笑っていて、他の兄妹とは違って物静かで取り乱したりしないスンスクが泣いている。
ハニ言われて、スンミはスンスクのいるミラの病室のドアを静かに開けた。
ベッドで眠り続けているミラの手をしっかりと握って、丸い背中が震えていた。
「スンスク・・・・・・・」
振り向いたスンスクは目を赤くして泣いていた。
スンミの顔を見ると、さらに沢山の涙を流した。
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