明日はまだ何もない明日(スンミ) 75
待ち合わせの時間が近づくとスンジョでさえ緊張して来るのだから、隣に座っているよく似ている母と娘も同じだろう。
「ペク様、お連れ様がお越しになられました。」
部屋のドアが開き、ヒョンジャが両親を伴って入って来た。
ガタッ!!
勢いよく立ちあがった拍子に、大きな音がした。
椅子がひっくり返り、スンジョの横にいるハニが尻もちをついた。
「何をしてるんだよ、二人とも。」
顔が似ていれば、行動も似ているのか、ハニが尻もちをついたと同時にスンミもハニに気を取られて一緒に尻もちをついた。
「大丈夫ですか・・・・キャッ!」
ドアが開いてすぐにバタンと大きな音がした方を見ると、ヒョンジャの母親が勢い余って前のめりに派手に転んだ。
「何をお前はしているんだ。」
「母さんは本当にそそっかしいんだから。」
そそっかしいのはハニもスンミも同じだ。
部屋に案内して来たスタッフも、一応仕事柄笑いたいのを堪えている事が判るくらいに、口元をヒクヒクとさせていた。
ハニとスンミは親子だから顔も行動も似ているが、後から来たヒョンジャの母は全く他人なのに、どこかハニとスンミに似ている雰囲気を持っていた。
「教授、すみません。母はよく何もない所で転ぶんですよ。」
ヒョンジャはスンミが気になったが、赤い顔をして何事もなかったかのようにして立ち上がるスンミが可笑しくて仕方がなかったが、さすがにお互いの両親の顔合わせの場では笑う事も出来ない。
「ペク教授。うちの家内もそそっかしいのなら、お宅の奥様とお嬢様もよく似ていて、そこに家の息子が惚れたのでしょうな・・・・ハハハッハ。」
「妻が尻もちをついたので、奥様は助けようとされていたのしょう。」
緊張が一気に飛んだ、双方の両親の顔合わせ。
三人とも怪我もなく、ただ恥ずかしい思いをした事が一生の思い出になる。
取り留めのない話をしながら、スンジョとヒョンジャの父親が面識があった事で交際と結婚が反対される事もなかった。
「嫁を貰う立場としてお聞きしたい事があるんですけど。」
打ち解けた話をしている時に、かしこまって話し出したヒョンジャの母の言葉に、きっとサンとの事を聞かれるのだろうとスンミは思って身構えた。
あれだけ雑誌に大きく載ったのだから、そのことを聞きたいのは母親として当然のことだ。
「母さん、余計な事は聞くなって言っただろう。」
「隠し事をして嫁に貰って、二人が幸せにならない事にでもなったら。」
「ヒョンジャ君のお母様、私が・・・・娘の事をお話します。な・・・何をお知りになりたいのですか?」
どうもヒョンジャの母は気になったら聞かないと気が済まないようだ。
スンミもハニも勿論スンジョも、サンとの事は隠すつもりはなかったが、最初にその話題になるとは思ってもいなかった。
「息子と結婚をしたいと言い出したのだけど・・・・・したの?」
「した?」
「母さん何を聞くんだよ。」
どうも、ヒョンジャの母はハニと似ているのか、それよりももっとグミと似ているような気がスンジョはした
「今時の娘は見かけと違うって言われているじゃない。スンミさんだって、ヒョンジャと出会う前は妻子ある方と付き合っていたと雑誌にも書かれていたから。」
「その事でしたら父親の私から説明を・・・・」
「スンミさんの自分の口から聞きたいわ。うちの息子も付き合った女性がいないとは言わないですが、ちゃんと対策を考えてそれなりのお付き合いもしていましたわ。結婚を前提に付き合いたい人がいるではなくて、スンミさんが大学を出たらすぐに結婚をしたいというのだから、もしかしてお腹に・・・・・・・・」
サンとの事をもっと聞かれると思っていたスンミ達にしたら、ヒョンジャの母親の質問が意外だった事になぜかホッとした。
「またそんな事をこんな場所で聞いて・・・・・スンミは妊娠はしていないよ。」
「違うわよ、ヒョンジャの子供がと言うのじゃなくて、その妻子ある人の子供が出来ていて捨てられたからヒョンジャが、貰ってあげるのかって・・・・母さんそうずっと思ってたの。」
はっきり言えばサンとは自然に連絡を途絶えた終わり方で、ヒョンジャと正式に交際を決めたのは最近だし急な事だった。
どんな母親でも、急にお付き合いしている人がいる事も知らないで結婚を宣言したのだから、それなりの理由があると思って聞くのは普通の事なのかもしれない。
「あの・・・・妊娠はしていません・・・私、心臓があまり丈夫ではないから子供は産めないのです。」
やはりスンミは知っていた。
スンジョが隠していた事を誰かに聞いたのかどこかで聞いたのかは判らないが、口に出して言ったのはこれが最初だった。
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