明日はまだ何もない明日(スンミ) 76

「こ・・・子供が産めない人を嫁には・・・・・ねぇ、お父さんそう思いませんか?」

スンミは自分で言ったものの後悔をした。

相手がヒョンジャではなくても、結婚を考えている相手に出会ったら言っておかなければいけない事。

「母さん、オレはスンミさえいれば別にそんな事は気にしていないよ。」

「開業医の息子の嫁になる人が、跡取りを産めない・・・・・・・・」

ヒョンジャの母の止まらない話を止めたのは、その夫ではなくスンジョだった。

「娘スンミは誤解をしています。」

「誤解?誤解なのアッパ・・・・・・」

ヒョンジャの父は何か知っているみたいに、ニヤニヤと笑ってスンジョを見ていた。

「ペク君、いいのか?この場で言っても。君の立場があるんじゃないかな?」

「立場と言ってもこれから結婚をする娘とその婚約者と、キム先生の奥様にも言っておかなければいけないじゃないですか。妻には先日話したので、まさか娘がそんな風に思っていたとは知らなかったんですよ。」

ハニの横に座っているスンミの方を向いて、スンジョは娘にだけ見せる優しい顔をした。

「スンミ、どこで子供を産めないという話を聞いたのか知らないが、アッパはこう見えて臆病なんだよ。」

スンジョが臆病と言って、それが信じられないという顔をしたのは愛娘のスンミだけでなく、教え子のヒョンジャも意外そうな顔をした。

「だって、アッパはパラン一の腕を持つ外科医でしょ?その外科医が、娘の心臓の手術も出来ないって・・・・・凄く症状が重いのだと思っていたの。」

「それ、ヒョンジャに聞いたんだろ?」

「そうだけど・・・・・・」

ハニとスンジョは顔を見合わせてクスッと笑った。

「スンミ、アッパがヒョンジャと付き合いが長いのにまだ言っている事の意味が判らないのか?」

ヒョンジャの父とはハニが看護学科にいる頃からの付き合い。

スンミが産まれてすぐに救急搬送をされた時の事も知っている。

「アッパは、家族・・・・・オンマや子供たちに関わる事になると臆病になるんだよ。特にスンミはアッパが一番可愛がっていた娘だから、1%でも完治が出来ないというだけでも絶対に大丈夫だと言えないんだよ。」

スンジョにしたら、ここまで自分が臆病だと人前で言う事は、天と地がひっくり返ったくらいに勇気がいる事だ。

ハニの様に人前で失態をして笑っていられるほどの事は、何年経っても出来る事ではなかった。

「じゃあ・・・・・・スンハお姉さんの様に、お母さんになる事は出来るの?」

「あぁ、出来るよ。でも、ちゃんと大学を出て式を挙げるまではダメだ。理由はミラの事があるからオンマはスンミを助ける事が出来ない。スンミが大学を出た頃にはミレもある程度手を掛けなくてもいいくらいに大きくなっているから。」

安心した顔のスンミを見て、今度はヒョンジャの母の方に向きを変えて頭を下げた。

「娘にきちんと話していませんでしたが、キム家の跡取りを産む事が出来ますので、二人の結婚を前提にした付き合いを許してくださいませんか?」

「そ・・・そこまで言われては・・・・」

「なぁ、母さん、ヒョンジャが好きな娘さんなんだから、たとえ跡取りが出来なくても構わないだろ?病院だって代々続いた病院と言ってもそれほど大きな病院でもないんだから、見栄を張る事もない。私はペク先生と親戚関係になるだけでも名誉な事だと思うけどな。」

意地悪を言ったわけでもないヒョンジャの母の言葉は、スンジョもハニも判っていた。

最初の顔を合わせで隠し事をしないキム家の考えに、スンミを嫁がせる不安が少し減ったように感じた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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