明日はまだ何もない明日(スンミ) 78
「これからどこに行く?」
スンミと並んでスンジョとハニを見送ったヒョンジャは、無言で隣にいるスンミに聞いた。
頬がわずかに赤味を帯びているスンミを見て、熱でもあるのかと思いおでこに触れた。
「キャッ!」
いきなり大きな声を出されて、ヒョンジャは驚いて手を離した。
「な・・・な・・・・・なにを・・・・・」
赤味を点していた顔が、真っ赤な顔に変わったかと思った途端、スンミは目を大きく見開き困った顔をしていた。
「顔が赤いから熱があるかと思って・・・・・具合が悪かったらちゃんと遠慮しないで言ってくれよ。」
「大丈夫、緊張しただけだから。それにね、私ね静養所で畑を手伝っていたから、それが良かったみたいであまり疲れないみたい。」
「そうか・・・・・で・・・どこに行く?」
「どこって・・・私デートした事がないし、友達はいなかったから友達と遊びに行った事もないし・・・・・・ずっと時間が空いた時は家の事を手伝ったり、バレエ教室で小さい子たちに教えていたから・・・・・」
聞かなくても判っていた事だった。
スンミは身体が弱かったのもあるが、父であるペク・スンジョが溺愛していたから、外に自由に遊んだりした事のない娘だと言う事。
「もういいのか?」
「もういいって?」
「例の人の事・・・・・忘れる事が出来たか?」
ヒョンジャは気にしていない風を装っていたが、本当はずっと気になっていて聞いてみたかった。
「サン先生の事・・・・・・・・忘れる事は出来ない・・・・・あっ!でもね、それはバレエを教えてくれた先生と言う事で、今はキム先生が一番好きよ。」
ここが人通りの多い場所ではなく、誰もいない場所だったら嬉しくて抱きしめたくなりそうだった。
儚げで、色に例えると白に近い薄いピンクのような女の子。
付き合った女の子は何人かはいたが、独占したいと思ったのはスンミが最初で最後。
「それなら・・・オレをその先生に紹介できるか?」
スンミの顔が一瞬曇ったのを見逃さなかった。
口に出して言ってはいけないと思っていたが、ヒョンジャの心の奥のジェラシーと言う感情がそれを言わせた。
「冗談だよ・・・・・どこか、静かなカフェでも行くか?」
ギュッと結んだスンミの口が、小さな声を出した。
「いいよ・・・・・」
「どこのカフェがいいのか、今から検索するから・・・」
「バレエ教室、ここから車で5分くらい。今の時間なら、先生が一人でいるはず。キム先生を紹介する。」
スンミにしたら、これからの長い人生を、何のわだかまりもなくヒョンジャと過ごしたいから、勇気を出してサンに会う事にした。
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