明日はまだ何もない明日(スンミ) 86
アフリカ・・・・・・・
こんなに遠い・・・・・
「一緒に行ってくれるかとは聞かない。スンミと気持ちが通じるとは思わなかったから、もう半年以上前に申請した。却下されると思っていたからスンミにも親友のスンリにも、アフリカでの勤務を申請した事を話していなかった。行っている期間は何年かは判らないし、待っていてくれとも言わない。この先どうするのかは、スンミ次第だ。」
海外どころか、旅行らしい旅行も今まで一度もした事が無かった。
スンハお姉さんやスンリお兄さんにスンスク、スンギに双子たちがオンマやアッパと旅行に行っても私だけおばあちゃんと留守番をしている事が多かった。
どうしたらいいのだろう。
ずっと一緒にいると思っていたのに、離れ離れになるなんて考えた事が無かった。
スンミはヒョンジャから贈られた指輪を、ケースの中に入れたままそれを眺めていた。
「ただいま。」
スンジョが家に帰ると出迎えるのは昔から変わらずハニだが、双子のスングとスアも何もする事が無いとハニに付いて玄関まで出て行く。
「アッパお帰り。」
「お帰りなさい・・・・」
「どうかしたのか?」
ハニの少しの変化も見落とさない父のその様子は、小学生の双子たちにもすぐに判る。
「スング、部屋に行かない?」
「そうだね・・・・オンマ、おやつを持ってスアと本を読んでるね。」
父と母が二人だけで話がしたいのではないかと思うと、双子たちはそう言って部屋に引き上げて行く。
「書斎で話すか?」
リビングで話をしていれば、家族が多いペク家では全てがオープンになり過ぎてしまう。
特にスンミが婚約してからは、グミが何かと口を挟みたくて仕方がない。
「コーヒーを淹れて来るね。」
スンジョはネクタイを緩めながら、ポストから持って来た郵便物を持ち書斎に入って行った。
自宅に届く郵便物の殆どは大したものでもないが、一通だけ気になるものがあった。
直ぐにそれを開封して、見ていると元気のないハニが入って来た。
「あのね・・・・話ってスンミの事だけど・・・・・」
「スンミの事?」
「スンジョ君に言おうかどうしようかと迷っていたんだけど・・・・・・・・・」
何か意味ありげな言い方に、またしてもとんでもない問題が起こったのかとスンジョは考えた。
「スンミに限ってまさかとは思うが・・・・・・」
「よく判らないけどね・・・きょうヒョンジャ君とディナーを食べて来たからすごくウキウキしているかと思ったら、元気がなくて泣いたみたいで目が赤いの。」
「泣いた?喧嘩でもしたのか?」
「じゃないみたい・・・・・もしかしたら・・・」
「もしかしたら?」
「デキちゃったとか・・・・」
「妊娠したというのか?」
「スンジョ君・・・・聞いてみてくれる?」
「多分違うと思う。ハニの思い違いだ。」
そうは言いきっても、成人している二人に四六時中付いているわけでもないから断言はできない。
「半年の間に色々あったから、不安になっているだけだと思うぞ。それより、こっちの方が重要だと思うが。」
開封した封筒をハニに差し出した。
「パラン高校?・・・・・・・よ・よ・呼び出しって・・・・・・・スンジョ君、スンギったら進路をまだ提出していないんだって!」
送られて来た郵便物でハニの話したい事をかわしたが、スンジョはヒョンジャが出した転勤届の書類の内容を知っていた。
スンミはヒョンジャに付いて行くのか、それとも残るのか・・・・・
ハニがこの事を知れば、きっと反対をする事は判っているし、グミも遠い異国の地に可愛い孫を行かせたがらないだろうと言う事も判っていた。
ギリギリまで二人には言わないでいた方が、スンミとヒョンジャの為にも良いと思っていた。
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