スンスクの春恋(スンスク) 7
「失礼します。」
職員室の入り口で一礼して、スンスクは入室した。
「スンスク、その椅子に座ろうか?」
「はい。」
1クラスの担任は進路指導ファイルを持って、職員室の隅にあるソファーにスンスクを座らせた。
「ご両親と話し合ってきたのか?」
「はい。」
スンスクは進路希望の用紙を担任に渡した。
「えっ?第一希望・・・・パラン大社会科学部?これ一本か?」
「はい、父も頑張るようにと言っていました。」
「ペク教授が?頑張れって?」
「はい・・・・」
「ここはパラン高校の・・・6クラスか7クラスの奴等の行く学部だぞ?君ならテハン大の医学部か、海外の大学に留学をしても十分通用するぞ。」
「父も母もこの大学で学びました。僕は、このパラン高校で教鞭をとれるように目指します。」
おとなしいが意志の固いスンスクは、担任の目をしっかりと見て答えた。
「先生・・・よろしいですか?」
担任と話をしていた場所に、ソン教頭が近づいた。
「スンスク・・・・君はお父さんと似ているね。」
「父とですか?」
「ああ・・・君のお父さんが高校三年の時に担任だったから判るが、君のお父さんはセンター試験の成績がトップで、テハン大にセンター推薦で合格をした。形だけの面接を受ければいいのに、面接会場に行かなかった。まぁ・・・理由は家に帰ってからご両親に聞くといいが、大学で勉強をするならテハンに行くのではなく『楽な大学生活よりも刺激的で変化に富んだ大学生活を送りたい』と・・・・そう言っていたよ。君はあの時のお父さんと、よく似ているよ・・・・・4年後にこの学校で一緒に教員として、生徒を指導できるよう期待しているよ。」
ソン・ジオ教頭先生はお父さんの担任だったんだ。
教頭先生が言った一言で、結局スンスクはパラン大社会科学部に内部推薦の願書を出した。
_____コンコン
「どうぞ。」
「こんにちわ・・・・・先生・・・・ベッドに座ってください。」
「スンスク・・・・・・大丈夫・・・・リハビリよ・・・・・」
ふらつきながらミラは静かにベッドの端に腰かけた。
「久しぶりね。」
「はい、今日パラン大学から内部推薦の合格をいただきました。」
「おめでとう!あなたもお父様やお姉様お兄様と同じ医療の道に行くのね。」
スンスクはカバンから内部推薦の合格通知を、ミラの目の前に差し出した。
「社会科学部?」
「はい、先生の後輩になります。」
「お医者様にならないの?」
スンスクは驚いた顔のミラに、子どもみたいに無邪気な笑顔を向けた。
「教員を目指します。先生と同じ教師になりたいです。」
「どうして・・・・・・・」
「どうしてって・・・・・・僕・・・・先生が好きだから。」
思ってもいなかった事を聞いて、ミラは大きな目を見開いた。
「ヤダ・・・・・・破談になってまだ傷が癒えないのに、そんな事を言ったら誤解しちゃうよ。」
「誤解してもいいです。僕・・・大学を出たら先生と結婚がしたいです。」
「スンスク・・・・・・・・私はあなたよりも4つも年上よ。それに私の病気は治らないの・・・・・・・結婚なんて・・・ご両親が知ったら・・・・・冗談を言ってからかわないで、先生はこんなに頼りなくても成人しているおと・・・・・・・・」
スンスクはどうしていいのか判らず、ミラの口を自分の口で塞いだ。
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