スンスクの春恋(スンスク) 9
「バカな事を言わないでよ。ずっと今のままでいられないと言ってるでしょ?あなたには未来もあるし、長い人生があるのだから、治らない病気の私と一緒に教壇に立つなんて無理なのよ。」
「先生、病気って心が弱ると良くならないのですよ。それに、僕は先生に勇気を貰ったのです。」
「私に勇気?」
「先生が・・・・・・生徒にバカにされてもメゲナイところです。」
明るい笑顔で笑うスンスクに対して、ミラは自分が馬鹿にされているように思えてムッとした。
「嫌味なの?」
「違いますよ。先生は僕の大好きな母によく似ているんです。母は今は看護師をしていますが、父と知り合った時はパラン高校の7クラスの中でも最下位だったんです。父のお蔭で、たった1週間で学年順位を50番に上げた事があるんです。どんなに周りから無理だと言われても、父を信じて勉強して・・・・・その姿を見た父が心のある人間になるきっかけだったと言ってました。先生は自分の授業を聞いていない生徒がいるのに、事前準備も他の教育実習の先生よりもしっかりとしていますよね。僕はそんな先生を見て、勇気を貰ったんです。兄妹の中で僕だけが両親に似ていなくてこの面子なので女性に告白もした事がないのですよ。僕はこう見えてと言うよりこのままですが結構考えが年寄りなんです。先生よりも、きっと僕は大人で頼ってもらっても大丈夫ですから、僕が大学を出たら結婚してください。」
ミラはスンスクの話に最初は馬鹿にされていると思って、聞きたくなかったが、無意識に頷いていた。
「4年後・・・・・・無理かもしれないよ・・・・・・だって・・・・・・私は・・・・」
「それなら、僕が高校を卒業してすぐに結婚しましょう。」
「何を言っているのよ、ご両親が反対するわよ。」
「うちは早婚なんです。両親は子供の考えを尊重してくれるので反対はしません。卒業してすぐに結婚しましょう。」
「結婚しても・・・・・・スンスク、あなたは父親にはなれないわよ。それでもいいの?」
「先生がいれば僕はそれで充分です。」
病院にいた時は、ミラを支えたい一心で自信たっぷりにプロポーズをしたが、いざ家に帰って両親の前にいると言い出せなかった。
「どうかしたのか?スンスク。」
滅多に食事中に話をしない父が、普段から無口なスンスクの様子が気になって聞いて来た。
母ハニや祖母グミに兄弟たちがスンスクの方を一斉に見た。
「別に・・・・・・・・お父さんってカッコいいなと思って・・・・・・」
「あら!自分の親に見とれていたの?」
母の言葉がスンスクには耳に入っていなかった。
いつ両親に言いだそうかと、気の弱いスンスクが心の中で大半を示していた。
「話があるんだろ?心に仕舞ったままにして食事をしてはいけない。」
「あらあら、スンジョはハニちゃんの事を好きなのに、心に仕舞ったままずっと何年も食事をしていたじゃない。」
「お袋は黙ってて・・・・・スンスク、今日病棟の看護師から言われたぞ。最近、頻繁にホン・ミラさんの病室に通っているって。女性の病室に、他人がそんなに頻繁に通う物じゃないぞ。」
言わないと・・・・言わないと・・・・・・先生を支えて行こうと決めたのだから。
「お父さん、お母さん・・・・・・・ホン先生と結婚させてほしいので、許可してください。」
スンジョは箸を机に叩くように置いた。
「スンスク、書斎に・・・・・」
「スンジョ、食事の途中よ。」
無表情のスンジョの顔を見て、グミはスンジョが怒った事を察した。
「スンリは兎も角、スンギやスングにスアには聞かせられない。ハニも一緒に・・・」
幼い弟たちはめったに子供達の前で怒った事のない父の別の面を見て蒼ざめた。
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