スンスクの春恋(スンスク) 16

「兄さん・・・・」

「ん?」

「ありがとう・・・・」

「何が?」

正面を見て運転をしていたスンリは、信号待ちで助手席の弟を見た。

いつも本を読んでいる事の多いスンスクが、兄の方を見て幸せそうに笑っている。

兄妹の中でただ一人いつも静かにみんなの様子を見ている弟の、初めて見た幸せそうに頬を染めた笑顔。

「兄さんが一緒にいてくれたから、ホン先生のお父さんが結婚を許してくれたんだ。」

「ホン先生か・・・・・・・・婚約者をいつまでも先生と呼ぶのか?」

「えっ・・・・えっと・・・・・・・」

「お前が自分の本当の気持ちを伝えたからだ。今のリアクション、お袋とそっくりだ。」

信号が変わり、スンリはまた正面を向いて車を発進させた。

「スンスクは、お袋たちに言ったんだってな。自分だけが両親に似ていないって。お袋がオレに悲しい顔をして言って来たんだ。『スンスクの相談相手になってあげてって』。お前の冷静な判断力とその相手の幸せを願う優しい心は、両親の一番いいところを受け継いでいるぞ。多少ふっくらしているのは、ウンジョおじさんに似ていると言うか亡くなったスチャンおじいちゃんとよく似ているぞ。お兄ちゃんはスンスクが生まれる時は7歳になる頃だったから覚えているけど、お前が生まれてすぐにおじいちゃんが亡くなったんだ。お前はおじいちゃんの生まれ変わりだ。おばあちゃんはあんな性格だけど、お前がいたからおじいちゃんが亡くなっても元気でいられたんだぞ。」

「兄さん・・・・・・」

「スンスク、お前はペク家オ家の両方の遺伝子をしっかりと受け継いだ子供だ。外見なんて気にするな。」

自宅のガレージに車を停めると、スンスクは家にいる両親に、ミラの家での報告をするために階段を駆け上がって行った。

「ただいま、帰りました。」

「お帰り、スンスク。着替えていらっしゃい、アッパがスンスクの好きなケーキを買って来たよ。」

スンスクは父の方を見た。

まさかミラの家での事を知っていて、何か言われるのかと心配になった。

父は本から顔をあげないまま、母の淹れたコーヒーを美味しそうに飲んでいる。

こういった表情の時の父は、無言でも嬉しい事があったのだと判る。

「お父さん、お母さん話してもいいですか?」

「何?いいよ・・・・・・」

ダイニングテーブルに着いている母が、スングとスアに飲み物を置いて、祖母のグミに双子の事を任せると、父スンジョの横に座った。

祖母がいる事に少しスンスクは緊張したが、一成人男子としてミラの家での事を伝える為に深呼吸をした。

「先生との結婚・・・・・・・ご両親に許可を貰って来ました。」

祖母のグミは一瞬驚いたものの、おめでとうと言って双子たちを放っておいてスンスクを抱きしめた。

母ハニもスンスクを抱きしめて声を出して泣いている。

ただ父は何も言わないが、スンスクには父が笑っている事に気が付いた。

「良かったな。早く準備をしないとな。」

口数は少ないが、手を貸さないと言った父の一言は、スンスクは嬉しかった。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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