スンスクの春恋(スンスク) 21
初めて迎える夜にスンスクとミラは緊張していた。
リビングでは、まだ祖母グミと母ハニとおばのミアが片付け物をしている様子が聞こえる。
「先生・・・・・ミ・・ミラ・・・・・お風呂はどうしますか?」
「一人で入れるわ。スンスクは明日の卒業式があるから先に入ってくれる?」
「いえ・・・ミラが・・・先に入って・・・・・髪の毛を乾かさないといけないから。」
「いいわよ、準備をしないといけないから。」
ミラはそう言いながら、自分の着替えを取りに行くためにベッドから立ち上がった。
思った以上に勢いよく立ち上がったから、足に力が入らずにふらついてスンスクの方に倒れ込んだ。
「キャッ!」
「わっ!」
スンスクが覆いかぶさるようにミラが倒れ込んで、二人はそのまま動けなかった。
手持ち無沙汰感のあるスンスクは、両手をそっとミラの背中に回した。
「先生・・・・・・」
「なんだか・・・・ドラマみたいなシチュエーション・・・・・重いでしょ?起きるわね・・・・・」
ミラはスンスクの身体から離れようとするが、スンスクは背中に回した手に力を入れた。
「スンスク?」
「先生が転んでも僕が受け止めますから・・・・・・だから不安にならないでくださいね。僕がずっと先生の支えになりますから。」
緊張しているスンスクが、また自分の事を先生と呼んでいるのを聞いたミラはスンスクがまだ高校生のままだと実感していた。
「卒業式が終わるまでは、今までのまま・・・・・キスだけにしてね?」
そう言うとミラはスンスクに今までで一番大人なキスをした。
「お母さん・・・・大丈夫でしょうか・・・スンスク。ミラを困らせていないか心配で・・・・・・」
「静かだから・・・・大丈夫よ、きっと。初めて過ごす夜だから、ハニちゃんも気になるかもしれないけど上手くやれるわよ。スンジョと最初の夜はハニちゃんもうまくやってもらえたのでしょ?」
グミはニコッと笑ってハニを見ると、ハニはハッとして真っ赤な顔をした。
「スンジョの子供だから、失敗はしないわ。スンスクが一番スンジョに似ているから、完璧にミラを幸せにさせてあげる事が出来るわ。」
もう30年以上前のスンジョとの新婚旅行。
最初の夜はワインをがぶ飲みして倒れて、大切な夜は何もなかった。
スンジョは最初の時は完璧にしてくれたが、自分が失敗した事など誰にも言えない。
「せんせ・・・・・ミラ、大丈夫?」
「大丈夫よ。待っていてね上がるから。」
スンスクはバスルームの前でミラが出てくるのを待っていた。
弟のスンギと一緒の部屋から客間を改装した部屋に移り、初めて過ごすミラとの夜に、スンスクの心臓は破裂しそうだった。
ドアがカチャリと開いて、湯気と一緒に香るミラのシャンプーの香り。
ほんのり頬を上気させたミラが自分の方を見上げると、夢ではなく本当に結婚したと、これからの責任の重さを感じた。
「お風呂・・・入ってね。私はそこのソファーに座って待っているから。」
スンスクがバスルームに入って行くと、ミラはゆっくりと立ち上がってクローゼットから明日が最後のパラン高校の制服を取り出して、制服を着るスンスクの卒業式を、参列者としてしっかりと見ておこうと思った。
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