スンスクの春恋(スンスク) 23
朝食時のペク家は、毎日の事だが凄まじかった。
ミラは早くに食事を終えて、隣で食事をしているスンスクが食べ終わるのを待っていた。
スンハが二階に上がって行くと入れ替わりに、スンジョが降りて来てリビングに座ると同時にハニが淹れたてのコーヒーを持って行く。
そのタイミングが、あまりにもピッタリで驚いていると、スンスクの弟のスンギとスングが先を争いながら降りて来て、スングの双子の妹が『髪が上手に結べない』と言ってハニの傍に行く。
スンスクの従妹のウジョンがのんびりと鞄を抱えて来ると、寝過ごしたと言ってスンハの息子のインハが階段を今にも転がり落ちるように飛んでくる。
「あの・・・お義父さん・・私・・・食事が終わったので・・・・」
「いいのよ、スンジョ君は子供たちが終わって学校に行ってからいつも私と食べるの。」
義理の父スンジョは、家族が食事をしている間も、新聞を読んだり本を読んだり家族の様子を見ている。
コーヒーが空になったのだろうか、その様子を見ていたハニが新しく入れ替えたコーヒーをスンジョの前に持って行った。
「ミラ、急がなくていいからスンスクと一緒に座っているといい。オレはこうして家族をただ見ている方が心が落ち着くから。」
父のその言葉に続けてスンスクが、小さな声で言った。
「お父さんはただ新聞を読んで本を読んでいるんじゃなくて、家族が食事をしている様子を見て、どこか具合が悪くないか何か悩みがないかを見ているんだ。」
「スンリお義兄さんとスンミお義姉さんは・・・・・・・・」
「スンリ兄さんは大学も今は卒業して、病院に入るまでの今は休養期間らしい。スンミ姉さんはあまり丈夫ではないからすぐに起床する事が出来なくて、多分後からお父さんたちと食べるんだ。食が細いから、お父さんが毎朝健康チェックをしている。」
そんな話をしていると、スンギが中学校に行き、スングとスアとインハが小学校に向かった。
「スンスクも学校に行かないと・・・・・・・」
いつもの癖なのかハニがスンスクに学校に行く時間が来た事を言い出し、ミラに手を合わせてゴメンねと言った。
「あとからお義母さんと行くからね。」
「うん。行って来ます。」
ダイニングの椅子から立ち上がるとグミが目を輝かせて声を掛けた。
「ほらほら、新婚なんだから『行って来ます』の挨拶のキスをしないと。」
スンスクは顔を赤くして緊張しながらミラの頬にキスをした。
ミラがダイニングテーブルの上の食べ終わった食器を片づけていると、ハニが慌てて走って来た。
「ミラ・・・座っていて。怪我をしたら危ないから。」
「お義母さん、私もスンスクの奥さんとして家の事を手伝わせてください。今出来るうちにやれる事はやって行きたいので。」
「そうね・・・じゃあ、ちょっとお願いしてもいい?部屋に行って取って来たい物があるから。」
「はい、大丈夫です。」
ハニはミラの事をグミとミアに頼んで二階の寝室に入って行った。
5分もしないうちにまた部屋から出て来て、息を切らしてミラの所に戻って来た。
「ミラ・・・ちょっといい?」
「ハニちゃんとリビングに行ってもいいわよ。」
グミに言われ、ミラはハニとリビングのソファーに座った。
「あのね、スンリにもソラに渡すように・・・・ソラはねスンリの婚約者なの・・・・そうそう、ソラに渡すように買ってあげたのよ。スンスクが前に私たちに結婚する事を話した後にすぐに買いに行ったの。でも、渡せなかったみたいでずっと机の引き出しの中にあったの。きっと恥ずかしくて渡せなかったのね。昨日スンスクがミラと病院に行く前に私に預けて『お母さんから渡して欲しいって』」
ハニは持って来た小さな箱を、ミラの前に出してふたを開けた。
箱の中には大げさ過ぎずそれでも綺麗な輝きを放っている乳白色の指輪が入っていた。
「ミラの誕生石のムーンストーンよ。ムーンストーンは母性本能・・・・・・まだ若いスンスクと結婚してくれたからって言うわけじゃないけど、我が家の男の子の奥さんになる人には指輪を贈りたかったの。高校を出たばかりで結婚になったから、指輪を用意する事も出来ないから私が選んで来たの。スンスクが買ってくれるまでペク家の嫁として、この指輪をはめてほしいな・・・・・」
そう言うとハニはミラの細い手を取った。
「これをはめてスンスクの卒業式に家族として一緒に行ってくれる?」
コクンと頷いたミラの指に、ハニが用意した指輪をはめた。
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