スンスクの春恋(スンスク) 27
「お義母さん・・・これはどこに・・・・」
「それは・・ここに置こうかな?」
ハニは張り切ってスンスクの高校卒業を祝う会の準備を、ミラと一緒にしていた。
グミはハラハラと不器用にセッティングをしているハニと、ゆっくりと動きながらハニを手伝っているミラを見ていた。
「お義兄さん、コーヒーを淹れましょうか?」
「いいよ・・・あとからハニに淹れてもらうから。」
「いつもお義兄さんはお義姉さんのコーヒーしか飲まれないですね。」
スンジョは一時もハニとミラから視線を外さないで、ミアの問いに答えた。
「コーヒーだけはハニが淹れたのじゃないと、飲んだ気がしなくて。ミアもたまにはのんびりとすればいいよ。」
大家族のペク家は、家の事をしているのはグミとミア。
ハニも仕事がある時以外は三人で家事をしていたが、今日はスンスクの卒業祝いの準備はハニが言い出して準備をしたからなのか、飾りの一つずつがどこか不格好で子供っぽいが、温かい母の愛が伝わるものだった。
門から上がってくる石段を歩く音がすると、グミがそれをミラに伝えた。
「スンスクが帰って来たわよ。」
それまでハニと一緒にセッティングをしていたミラは、持っていた飾りをテーブルの上に置いて急いで玄関に向かった。
病気の影響で筋力が弱くなって来たのと、そそっかしい性格の所為で、何もない所でミラはつまずいた。
「危ない!」
運が良かったのか、ちょうど二階から降りてきたスンリが咄嗟に手を伸ばした。
「すみません、お義兄さん・・・・・・・」
「スンスクの言うとおりだ・・・・・・」
「何が?」
「いや・・・・ほら、スンスクがドアノブに手を掛けたぞ。」
玄関ドアのガラス越しに見えるスンスクは大きな花束を持っていた。
「ただいま・・・・・・どうしたの?」
家族全員がスンスクの方を見てニヤニヤとしている事が、スンスクにはちょっと恥ずかしかったが、ミラがスンスクのカバンを取りに行くと、喋らないようにしていたグミが口を開いた。
「スンスク、それってミラへのプレゼント?」
「あ・・・・・・ええ・・・・・・・」
「花言葉を知っていたの?」
花言葉を知っていたからこの花を選んだのだと言う事は、スンジョもスンリももちろんグミも気が付いていた。
「ストックの花言葉って・・・なんなの?」
この中で花言葉を知らないのはきっと、ハニとミア・・・そして受け取るミラだろう。
「永遠に続く愛の絆・・・・・・だよな。」
スンジョが言うと、スンスクは真っ赤な顔をした。
「八重咲きのストックの花言葉は、本をよく読むスンスクなら知っているだろうから。」
ミラの目がキラキラと輝いた。
「本当?スンスクは花言葉を知っていて選んでくれたの?」
家族の注目にも慣れていなかったスンスクは、赤くなっている顔をさらに赤くした。
「い・・え・・っと・・・・その・・・・財布の中を見て、沢山花を買いたかったから手持ちのお金で決めて・・・・・・・・・」
スンリやスンミにグミがニヤニヤとからかうように見ている視線に耐えられなくなったスンスクは、その花束をミラに無言で渡した。
「ありがとう・・・すごく甘くていい匂い・・・・・・うれしい・・・・・」
ストックの花の香りが、スンスクの心のように優しくて甘く幸せな気持ちにさせた。
「き・・着替えてくるから・・・・・・・」
逃げるようにしてスンスクは、部屋に向かって走って行った。
「スンスク!今日はミラのご両親もいらっしゃるのだから、ちゃんと挨拶の言葉を忘れないで言うのよ。」
ハニの声はスンスクの耳にも届いたが、照れ臭いのか返事は返ってこなかった。
スンスクの卒業を祝う会ではあるが、ミラのご両親と兄弟も呼んで、二人が家族そろっての前で、結婚指輪の交換をする事になっていた。
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