スンスクの春恋(スンスク) 28
________ピィンポォ~ン
「はーい、どなたかしら?」
グミはインターフォンに応えると、モニターに映っている中年の男性が応えた。
「ホン・ミラの父です。」
「お待ちくださいませ・・・・・・ハニちゃん、スンジョ・・・ミラのご両親がいらしたわよ。」
グミに声を掛けられると、ハニは緊張した面持ちでスンジョの方を向いた。
スンジョはいつもと変わらない顔で、読んでいた本を横に置いて立ち上がった。
「ミラ、スンスクを呼んできて。」
「はい。」
スンジョとハニは二人でミラの家族を迎える為に一緒に外に出て行った。
「スンスク?開けてもいい?」
「いいですよ。」
ミラが部屋のドアを開けると、スンスクは高校の制服から私服に着替え終わっていた。
「父と母と兄家族が来たの。」
スンスクは緊張していた。
ミラと結婚を決めてから何度か食事に招かれて、ミラの両親と兄夫婦とは挨拶も済んで多少は話もしたが、家族の前で指輪を交換する事を思うと、まだ年が若い自分にミラを任せてくれた事への期待を裏切らないようにしないといけないとを思った。
「制服・・・・明日、クリーニングに出すね。」
ミラがスンスクの脱いだ制服を、ランドリーバックの中に入れるとそれをスンスクが脱衣所の所に置いた。
ここに置いて、母に言えば集荷に来る人に渡す事になっている。
「行こうか・・・・」
「うん。」
スンスクは指輪の入った箱をポケットに入れた。
「なにもかもスンスクのおばあちゃんとお義母さんに任せて・・・・・・・このムーンストーンだけでよかったのに。」
「だめだよ、式は兄さんより先には出来ないからせめて指輪だけでもきちんと贈らないと。まだ学生でちゃんとした婚約指輪も買えなくて、ミラに申し訳ないけど・・・・・この結婚指輪だけは自分の力で買ったんだ。」
「自分の力って・・・・・スンスク・・・アルバイトをしたの?」
「うん・・・・アルバイトって言うか・・・・・スンギとスンギの友達に勉強を教えて・・・そのお礼にもらったお金を貯めていたんだ。」
高価と言えないスンスクの買ってくれた結婚指輪。
それでもスンスクの思いが伝わるこの指輪が、世界で一番素敵な物だった。
リビングから聞こえるミラの家族の声。
二人は腕を組んで部屋から出た。
「主役の二人よ。」
グミの拍手とスンスクの兄弟たちが鳴らすクラッカー。
結婚式と言えるものでもないが、スンスクの高校卒業を祝う会と、二人の指輪の交換の食事会は始まった。
「ミラ綺麗よ・・・・・」
普段着のミラだが、幸せだから輝いて見える。
ミラの母は、娘が幸せそうに微笑んでいる顔を見て、若いスンスクと結婚する事で病気の不安を少しでも取り除けていると思うと、涙が溢れそうになった。
ミラの父も、大切に育てた娘をしっかりと支えて歩いて来るスンスクと結婚する事を許して良かったと思った。
「さっ・・・・主役の二人はここよ。」
ハニがミラの椅子を引くと、スンスクが身体を支えて静かに座った。
「まず、お祝いのシャンパンよ。」
綺麗に磨かれたグラスに、シャンパンが注ぎ入れられた。
パチパチとはじく泡が、二人を祝福しているように弾けていた。
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