スンスクの春恋(スンスク) 29
「まず、この会の司会・・・・なんだか照れるな。」
「自分で可愛い弟のためにやると言ったでしょ!」
ハニの言葉に、家族はドッと笑った。
「ハハ・・・まぁ・・・・兄の結婚式よりも後に挙げてくれる、兄想いの弟の高校卒業を祝う会とスンスクとミラの指輪交換会の司会をします、ペク家の長男スンリです。あ~面倒臭いなぁ。」
この身内だけの会の司会を引き受けたが、急にかしこまった言葉を言う事に照れくささを感じた。
「スンリが自分で司会をしたいと言ったんでしょ?オンマだって、苦手な料理をしたんだから。」
「なんだよ!料理ったって、おばあちゃんが作った料理を盛り付けただけだろ!」
母と息子の会話とは思えない仲の良さに、ミラの両親はこの家族に娘を預けて良かったと思った。
「ここで、今日の主役のスンスクから、家族に向けて一言・・・・・」
急に一言を言うように振られて戸惑うスンスクは、真っ赤な顔をして汗を掻いていた。
「に・・兄さん・・無理です。僕は人の前で話をするのは・・・・・出来ないです。」
ニカッと笑ったスンリはスンスクの腕を引っ張って立ち上がらせた。
「お前、今日の卒業生代表の挨拶、すごくよかったじゃないか。」
「見ていたのですか?」
「いや・・・・・おばあちゃんからその時のビデオを見せてもらっただけだよ。」
困った顔でグミの方を見ると、大丈夫よと言って笑っていた。
「大丈夫、失敗してもここにいるのは家族だけ。思った通りに言いなさいよ。」
「おばあちゃん・・・・・・・」
そこにいる家族みんながスンスクの言葉を待った。
「今日は、僕の高校卒業を祝う会を設けてくださって、ありがとうございます。そして、ミラのお義父さんお義母さん・・・・僕のお父さんお母さんにおばあちゃん・・兄さん・・・・・今日は仕事で来る事が出来なかった姉さん・・・・・・スンミに弟と妹たち・・・・・・まだ僕は社会に出ていないのに、結婚する事を許してくださってありがとうございます。僕もミラも先の見えない事に悲観はしていません。今を大切にして過ごして行きます。この先人の手を借りないといけない事もあると思います、その時はどうか助けてください。家族の・・・・・家族の支えがミラの一番の薬だと思います。最後まで諦めないで、いい夫婦だった・・・良い子供たちだった・・・・良い・・兄弟だった・・・良い・・・・・そう思っていただけるようにこれからの僕たちを見守ってください。」
頭から滴り落ちる汗を拭いながら、スンスクを見ている家族に頭を下げた。
その下げた頭の視線の先に、ミラがハンカチを差し出していた。
誰ともなしに拍手が起こり、スンスクはちゃんと自分の気持ちが言えた事にホッとした。
だけど、最後に言いたかったのは、まだ見ぬ子供に向けても言いたかった。
「それでは早速ですが、スンスクとミラの結婚指輪の交換を行います。ササッと交換して、早く食べないと、スンハがインハを連れてくるからごちそうが減るので・・・・・・・」
どっと笑いが起こり、スンスクが机の上に指輪の箱を置くと、皆が静かになった。
スンギとスングにスアの可愛い歌声で、スンスクはミラの手を取って立ち上がらせると、決して高価ではないが世界で一番きれいな結婚指輪を、世界で一番きれいな花嫁の細い指にはめられ、花嫁は世界で一番優しい花婿の温かな指に指輪をはめた。
「皆さん盛大な拍手をお願いします。」
家族だけのささやかな指輪交換だけのパーティ。
ウエディングドレスも着ない、結婚式もしない寂しい指輪の交換でも、スンスクとミラの二人は幸せな顔をしていた。
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