スンスクの春恋(スンスク) 30
リビングではペク家の子供たち、スンスクの弟や妹と兄や姉と従弟のウジョンが、二人を祝うパフォーマンスをしていた。
ハニは汚れた食器を洗いながら、リビングの様子を笑顔で見ていた。
「スンスクさんのお母さん・・・・・・」
「あっ!はいっ・・・・・・・」
ハニは後ろを振り返ると、ミラの母が立っていた。
急いで水道を止めて手を拭きミラの母の方を向いた。
「気が付かなくって・・・・食器を運んでくださったんですね。」
「あの・・・ちょっとお話をしてもよろしいですか?」
「はい・・・・ここでは、ちょっと落ち着かないですね。二階のフリースペースで話しましょうか?」
ハニはミラの母親をフリースペースに案内する前に、若い二人のこれから生活をする部屋に連れて行った。
「この部屋・・・・・・スンジョ君・・・・うちの主人が信用できるコーディネーターに頼んでリフォームしたんです。説明をしてもいいですけど、二人の荷物が入っているので、クローゼットを無断で開けるのはちょっといけないので・・・・・ごめんなさいね、勝手に私たちの方で決めちゃって・・・・・・・」
ミラの母は、娘の為にリフォームした部屋をグルッと見回していた。
「リモコンが沢山になってしまったんですけど、歩ける今は良いですけど、車椅子からでもベッドからでも使えるようにしてあるの・・・・・・・緊急の時のボタンは二階の私たちの部屋に連絡が入るようになっているから安心してくださいね。私も主人も仕事でいない時は、お義母さんと義妹のミアのどちらかが家にいるので、独りぼっちにならないの。」
自分の息子の結婚相手が年上で病気を患っているのに、快く受け入れてくれて家族みんなが温かく見守ってくれている事に、ミラの母は感謝の気持ちで涙が出てきた。
「二人の赤ちゃんが生まれたら、私もお義母さんもすごく張り切ると思うんです。」
「子供は持たないようにと・・・・・二人には約束させました。」
静かな言い方だが、キッパリと言うミラの母親の顔をハニは驚いて見ていた。
「未来のない娘です。子供が生まれても母親がいなくては、その子供が可哀想ですから・・・・・・それなら最初から子供を持たない方がいいと思いますので・・・・・・」
「私・・・・・・幼い頃に母を亡くしているんです。父と二人で18歳まで過ごしたんですけど、一度も寂しいとか思った事がないとは言えませんが、母が病気でベッドに伏していた時私に言ってくれたんです。<ハニや・・・・・ハニがいるからどんなに辛い治療でも頑張れる事が出来る>って・・・・・好きな人と一緒になったらそれも薬ですし、子供の笑顔を見ると元気になるんですよ。」
ハニはまた一つ暗い過去を思い出した。
「一番上の娘スンハとスンスクの兄のスンリの間に一人流産しているんです。」
「・・・・・・・」
「妊娠が判って直ぐに、ちょっとトラブルが遭って・・・・・・・亡くしたんです。子供が自分より先に亡くなると辛いですけど、その子供を見ればお母さんも娘さんが頑張って母親になった事を喜んであげないと。自慢になりますけど、うちの娘スンハは優秀な産婦人科医です。主人が生まれた時と、私たちの6人の子供と孫が生まれた時に立ち会った先生の下で仕事をしています。一人だけ・・・スンミは、自宅で、生まれてしまったのですけど、我が家の事情もすべてよく分かっている産婦人科の先生なんです。子供を持つかどうかは二人に任せてあげてください。パランの医師は優秀な人が多いから大丈夫ですよ。」
明るく話すハニを見て、この姑や明るく前向きな家族を見て、この家に未来のない娘を嫁がせてよかったとミラの母は思った。
フリースペースに上がると、ハニはバルコニーに通じる硝子戸を開けた。
「この間ね・・・・・・このバルコニーにミラを連れて来てあげたの。そうしたらスンスクが、ミラを好きになったのは私と似ているからなんですって。そう教えてくれたの。顔も体型も似ていないのに・・・・・・・どこが似ているかをミラから聞いたの・・・・・・・一生懸命なのに失敗ばかりするドジなところですって・・・・・・失礼しちゃうでしょ?」
ミラの母はハニの澄んだ笑顔を見て、きっとたくさんの子供を育てたのに、若々しく輝いていることが羨ましく思った。
「嫁がせるのに結納返しも何もなくて・・・・・・リフォームまでしていただいて・・・・・・何から何までしていただいて・・・・・・・私達があと準備をすることがありましたら・・・・・・・」
「何もしなくていいです・・・・・・」
「それでは、こちらの肩の荷が重くて・・・・・・・」
「そしたら・・・・・・お願いしちゃおっかな?」
ハニは下のにぎやかな声で消されるくらいに小さな声で、ミラの母の耳に囁いた。
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