スンスクの春恋(スンスク) 32

遠くに聞こえる誰かの声

耳を澄まさなくても聞こえる楽しげな声

スンスクはその声を聞きながら眠っているのに笑顔になった。

隣に手を伸ばして、シーツを探るように手を滑らせていると、温かいと思っていたら冷えているシーツの感触に目を覚ました。

ミラ?

いつの間にかミラはベッドから出ていたのか、部屋の中には姿がなかった。

スンスクは慌ててベッドから起き上がり足を降ろすと、もつれて転んでしまった。

転んだ音もミラの為に衝撃をなくすようにしてあるから、多分もう起きているだろう母と祖母と叔母には聞こえない。

もしかしたらトイレかバスルームで倒れていないか、ウォークインクローゼットに入って出られなくなったのか・・・・・・・

スンスクは急いで起き上がり、トイレを覗いた。

トイレは綺麗に掃除がされていて、使用した感じもない。

バスルームも、昨晩自分が使った後に洗ったまま。

ウォークインクローゼットも、ランドリーバックも綺麗に片付けられ、ミラがいる様子もない。

ミラ・・・・どこに行ったの・・・・・・

「お母さん・・・・ミラがいない・・・・・・・」

スンスクは部屋から出て、ダイニングに立っている母に声を掛けた。

「スンスク・・・・・起きたの?」

「えっ?」

物陰からひょこっと顔を出したミラは、不思議そうな顔をしてスンスクを見た。

「良かった・・・・・・・そこにいたんだ・・・・・・」

胸をなでおろして、スンスクはリビングの床に座り込んだ。

「スンスク、起きたならスング達が来る前に食事をしてくれる?ミラが玉子焼きを作ってくれたの。」

テーブルに並んだ大量の玉子焼き。

家族が多いからいつも沢山の玉子焼きを母が作るのだが、今日はその倍もあった。

「こんなにミラが作ったの?」

「違うよ、こっちのいつものお皿がお母さんで、こっちの白いお皿がミラよ。食べ比べて。」

スンスクは嬉しそうな顔をして席に着いた。

向かい側に座っている兄スンリは、ニヤニヤと無言で笑っていた。

スンスクが最初に口にした方は、母がミラが作った玉子焼きだと教えてくれた方だった。

「うっ!」

いつも玉子焼きを食べる時に、ペク家の家族は一度声を出す。

「お母さんと一緒だ・・・・・・殻が入っていた。」

次に食べた方は、眉間にしわを入れて声も出ないくらいだった。

「お・・・・・お母さんの玉子焼き・・・・・今日のは酷い・・・・・・・」

そのスンスクの言葉を聞き、ミラは悲しそうな顔をするとハニが慰めていた。

笑いをかみ殺していたスンリは、我慢しきれずに大きな声で笑い出した。

「あ~おかしい・・・・くく・・・・・お袋、ある意味スンスクは違いが判ったぞ。オレの勝ちだ。」

スンリは手を出して母から何枚かのお札を受け取った。

「どうしたの?」

訳も分からずスンスクは兄の顔とミラの悲しい顔を見比べていた。

「オンマとミラの玉子焼きの対決よ。スンリがわざとオンマが作った方を白いお皿にしたの。」

グミが他のおかずをスンスクの前に置きながら、楽しそうに話した。

「スンスク・・・・ごめんね・・・お義母さんから、スンスクがお義母さんの作った玉子焼きが好きだからって聞いたから、うまくできなくて沢山作っちゃったの。」

母も料理はヘタだが、一生懸命に作っているから、父も兄弟たちも母の料理に一度も文句も言った事はない。

が、まさかミラも料理が出来ないとは思わなかった。

「美味しいよ・・・・・お母さんと同じ味で・・・・・でも、玉子の殻が多すぎる。」

「スンスクも兄さんと一緒だな。」

「兄さんと一緒?」

「ソラも料理が全くできないんだ。だから、ソラの家で同居する事になったんだ。ソラの母親も料理が出来ないから、家政婦さんが作ってくれるけど、ペク家は親父の代から結婚相手は料理が出来ない奥さんを貰うみたいだ。」

ハニはスンリの頭をバシッと叩き、渡したお札を手から奪った。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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