スンスクの春恋(スンスク) 34
「どうぞ・・・・椅子はドレッサーの椅子を使って。」
この家に同居して数日経つが、まだミラとスンミは二人だけで話をした事がなかった。
いつもニコニコしていて可愛らしい顔のスンミは、ミラの顔を見ないでただ窓の外を見ていた。
「私の事が嫌いですか?」
「えっ?」
驚いたようにスンミは目を見開いてミラの方を見た。
「スンミ・・・さん、私と一度も話をした事がないですよね。嫌いなのかなって・・・ずっと思っていたの。」
「嫌いだなんて・・・・・」
「この家でスンミさんが、一番私と年齢が近いから仲良くしてほしいと思ってるのですけど。」
俯いて黙って下を見ているスンミは、今にも消えそうなほど細い身体をしている。
血管が見えるほどに白い肌に、明るい髪の色。
伏し目がちにしている目は、濃いまつ毛が長くて人形のようだ。
「どうして話をしたらいいのか・・・判らないの。」
ポツンと話し出したスンミの声は小さく、家族と話をする時とは違って寂しそうだった。
「スンハ姉さんはおばあちゃんに似ていて元気で、病気もしなくていつもテニスやら旅行やら・・・・・羨ましかった・・・・・・私がバレエを始めたのは、そんなお姉さんに憧れて。小さい頃に比べたら身体も丈夫になったけど、それでも時々熱が出て、学校だって休んでばかり・・・・・私ね・・・・・予定日より早くに自宅出産だったの。アッパが家にいた時で良かったんだけど、小っちゃく生まれてすぐに病院に搬送されて・・・・病院にいる時も、もしかして助からないんじゃないかって言われていたの。次の年にスンスクが生まれて、弟の方が早く大きくなるのに私はいつも妹に見られていた。でもね、スンスクが優しいからどんなに辛い事でも助けてくれて・・・・・それがこんなに早くに結婚しちゃったから・・・ちょっとミラさんに嫉妬していたみたい。」
そこまで話をするのもまだ辛いのか、言い終わると大きく息をした。
「ごめんなさね、まだしんどいのよね。」
「ねえ・・・ミラさんは年齢は上だけど、弟と結婚したから妹になるのかな?」
「む・・・・難しいね・・・・」
「でしょ?どう接していいのかも判らなかった。」
ミラは真剣に考えていた。
自分自身も妹でいいのか、年が上だから姉になるのか・・・・・・
「こうしない?」
ミラが言うとスンミが顔を上げた。
「友達・・・ううん・・・・同い年じゃないし・・・姉も妹もない事にして敬語もなしにしようか。」
「いいのかな・・・・・・・」
「いいよ。きっとスンスクもいいと言うし、お義父さんもお義母さんもいいと言うと思うよ。」
「じゃあ・・・私はミラって呼んでもいい?」
「いいよ、私はスンミって言うわね。」
大きな目が笑うと、何とも言えないくらいに可愛い顔のスンミの目から涙がにじんでいた。
「もう少し休むから・・・気にしなくていいわ。アッパの薬を飲んだらきっと良くなるから。スンスクと出かけても大丈夫よ。」
「でも・・・・・」
「慣れているわ。いつもよりはそんなに熱も高くないから・・・・・それに・・・ちょっと電話を掛けたいから。」
枕元に置いてあった携帯を取ってミラに見せた。
「ごめんね・・・・今日バレエ教室には行けないからその連絡もしないといけないから。」
ミラはスンミが電話をする邪魔をしないように部屋を出て行った。
部屋を出るとスンスクがスンミの部屋に入ったのを心配そうに見ていたのか、何事もなく出て来た事にホッとした顔をしていた。
階段を一段ずつ降りて来たミラに、スンスクが手を貸した。
「スンミと話せた?」
「知っていたの?」
「うん・・・・・スンミとは年子だからね。スンミが僕と一番仲が良かったから気にはしていたんだ。きっとスンミはミラとどう接したらいいのか判らないんだろうって。」
「凄いね・・・・スンスクと結婚してよかった。ペク家の人ってみんな周りの人を大切に思ってくれるから。」
ミラは大家族のペク家の、それぞれの優しさと温かさを毎日少しずつ実感するようになって来た。
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