スンスクの春恋(スンスク) 35
スンスクとミラはウッドテラスでのんびりと寛いでいた。
「ここの景色はいいと思いませんか?」
「落ち着くわね。」
「お父さんとお母さんがここで並んで座っているのを、幼い時に見て憧れていたんです。僕も好きな人と結婚したらここでお茶を飲みたいって。」
湯気と香のいいストレートティと、昨日ミラの両親が持って来たお菓子を二人で食べていた。
「スンミと打ち解けて良かったよ。スンミは明るくていい子なんだけど、小さい時から身体が弱いから家にいる事が多くて学校もあまり行けないから、友達があまりいないんだ・・・・・」
「そうなの・・・・」
「そういう僕もあまり友達はいないな・・・・・これはお父さんと似ているんだ。」
「お義父さんと?」
「うん・・・・人付き合いが苦手というか、人と合わせる性格じゃないから。姉さんと兄さんは、お母さんとおばあちゃんに似て交友関係も結構あるんだけどね・・・・・・・。」
二階から降りて来る気配に振り返ると、外出着に着替えたスンミがいた。
「スンミ、一緒にお茶を飲まない?」
少し話した事で、ミラもスンミに声が掛けやすくなった。
「人と会う約束をしたから・・・・・・・そのまま学校に行って来るから。ありがとう。」
まだ顔色の良くないスンミは、ほんの少しだけ笑顔で答えた。
「大丈夫かな・・・・・・まだ具合が悪そうで・・・・・・」
「この家の誰も知らないけど、スンミは付き合っている人がいるみたいなんだ。」
「えっ?」
「スンミから聞いたわけじゃないけど、男の人が運転している車から降りたのを見た事があるんだ。家の前じゃなくて・・・・・スンミの通っている大学の近くで・・・・・・」
スンミはパラン大ではなく、富裕層の家庭の女の子が通う女子大に通っている。
そこは富裕層の娘が通っているから、割と授業のペースも自由で、特に風紀の乱れる事をしなければ何も問われない学校だった。
学校を休みがちなスンミは、授業に出る事が出来ない時は、レポート提出やネットでの公開授業を受けていた。
「卒業後はすぐに結婚するのかしら?」
「どうだろう・・・・・スンミはお父さんが子供の中で一番可愛がっている子だし、スンミには結婚は無理だと、お父さんは言っているから。」
他の子供たちを可愛がらないわけではないが、スンミはハニによく似ているからスンジョは特に可愛がっていた。
外で車のドアが開くのが見えた。
「あら・・・あの車にスンミが乗ったけど。」
「多分スンミの付き合っている人だよ。今は家にお父さんもお母さんもいないから、きっと迎えに来てもらったんだよ。スンミが結婚するって言ったらお父さんどうするかな。」
スンスクはスンミの乗った車を見送っているミラの手をそっと触れた。
「どうかしたの?」
「あの・・・・・・・・」
戸惑っているスンスクの顔を、不思議そうに見るミラの目はキラキラと輝き、昼下がりの太陽の陽射しが反射していた。
「キ・・キスしても・・・・いいですか?」
「やだ・・・・・スンスクったら」
スンスクはミラの言葉にガッカリした。
「そうですよね・・・・・・・・こんな所でキスをしたら、嫌ですよね・・・・」
ミラはガッカリしているスンスクに抱き付いた。
「違うわよ。結婚したんだから、そんな事を聞かなくてもいいのに。」
温かな春の陽射しの溢れる昼下がり。
誰もいないペク家のウッドテラスのベンチで、若い二人は風の音だけの中でいつまでもキスをしていた。
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