スンスクの春恋(スンスク) 37
スンスクは歩いているミラを見つけると駆け出して行った。
「スンスク?」
「一人で来るなんて・・・・・おばあちゃんはいなかったの?」
ギュッとミラを抱きしめると、ミラは恥かしそうに笑った。
「誰かに見られるよ。私・・歩いたからすごく汗を掻いていて、綺麗じゃないから・・・・・・・・」
身体を離そうとするミラに気が付いて、スンスクは抱きしめている腕の力を緩めた。
「おばあちゃんは連れて行ってあげるって言ってくれたのだけど、撮影旅行に行く準備をしていたから断って来ちゃった。」
まだ息が荒いミラを近くのベンチに誘って座らせた。
「でも・・・・どうやって・・・・・バスで来たの?地下鉄?」
「さすがに公共の乗り物はね・・・・・・何かあったら他の人に迷惑になるから、タクシーを呼んで貰って来たの。大学に来たらスンスクにも会えるかなって思って。」
「学校に来るなら、朝僕が家を出る時に言ってくれればよかったのに。」
ミラは首を横に振った。
「まだ自分で出来るわ。そんなに心配しなくてもいいから。それに教授から電話があったのは、お昼近くだから。スンスクはスンスクでちゃんと自分の授業に集中してほしいの。」
大学の景色はいつもと変わらず、静かな風が流れる。
木々の枝の隙間から射し込む木漏れ日は、穏やかでスンスクのように優しかった。
「スンスク、デートしよっかぁ・・・・・私達デートってした事がないでしょ?スィーツを食べたり、ショッピングをしたり・・・・・・・プリクラ撮ったり・・・・・」
そんなデーとどころか、スンスクとミラは恋人として交際を申し込むよりも先に結婚してほしいとスンスクからプロポーズを受けて、わずか数週間で結婚した。
結婚式こそ挙げてはいないけど、それは二人には限られた時間で精一杯幸せでいたいからだった。
「いいよ。でも、心配するといけないからおばあちゃんに電話だけしておかないと。」
スンスクはミラと学校の帰りに少し寄り道をする事をグミに電話をした。
<いいわよぉ~楽しんでいらっしゃいね。スンジョとハニちゃんに伝えておくから。>
父と母や、スンリとソラが二人で出かけるだけでも、喜んで送り出してくれる祖母グミは、孫のスンスクのこの電話を自分の事のように喜んだ。
「どこに行けばいいのか、僕は気の利いた場所も知らないよ。」
「いい所って言うのか、実はね・・・・・私も知らないけど、公園のボートに乗りたいな。その後に芝生に座ってハンバーガーを食べてね・・・・・『お腹がいっぱいになったからちょっと芝生で寝転んで休もう』そう言って、スンスクと青い空の雲を見て何の形に似ているか話しをして、他の恋人のように・・・クスッ・・・・・キスしたいな。それから『少し涼しくなったから帰ろうか』『待って・・・・プリクラを撮らない?』そんな風に・・・・・・・」
スンスクはミラの計画を聞いて、どこか母に似た夢を見ているような言い方を聞いて、益々ミラが自分の中で大切にしたい女性になった。
「行こうか。すぐに夕方になっちゃうから、すぐに行こうか。」
ミラの手を引いて学生駐車場に向かった。
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